見ることに関する考察

Photo 09-12-2014, 13 08 06

11月27日の日経新聞に面白い記事が載っていた。

私の履歴書・画家絹谷幸二さん

「野球選手も画家も『見る』ことが大事という点では同じだ。私は講演で『物を見ているのは目ではない』と話したことがある。見ているのは眼の奥にある柔らかな脳なのであり、割れたガラス片を見ただけで頭が痛くなる気がするのはそのためだ。見るとは、その場の状況をとらえて考えることである。」

絹谷さんは、長嶋茂雄さんや松井秀喜さん、野村克也さんとも交流があったみたい。松井秀喜さんが、打てない球の相談を画家にしたというから面白い。

オットー・シャーマーも著書の「U理論」の中でよく似たことを言っている。

「まず徹底的に観察する。それから一方外に退くんだ。うまくいけば内面の深い場所にある何かに触れることができる」

僕は大量のデータを分析しそこから気づきを得るということを4年ほど前はよくしていたものだったが、最近はそれほどたくさんの対象でなくともじっくり観察し話を聴きときには一緒に描いたりしながら深く理解することを大切にしている。

もちろん、どちらのアプローチも大切なのだが、自分の人生の段階みたいなものとその少なくをじっくり見るということが妙にマッチしている気がするからだ。

客観的であることに強い関心を持った時期から離れ、そしていまは共感とかその心の中にある動機を納得するまで観察し聴いてみたいと思う。それは対象の人生に関心を持つことであり、それを見る自分の人生も省みることに繋がる。

もちろん、仕事となれば両方の思考を活用するのだが、自分のいる業界もどちらかというと後者を求める声が増えている気がする。

状況をとらえて考えて、ふっと気がつくことこそ、きっとインサイトとか洞察という段階なのだろう。かなり主観的なプロセスであるだけに、その思考プロセスを残すことが大事になると思う。美大生やデザイナーであればリフレクティブ・ダイアリーやスケッチブックを書くし、ぼくたちもノート書いたり、ポストイットを書いて見えるようにして共有する。

見る人によって変わるから面白いし、だから誰が見るかが大切なのだと思う。ビジネスや科学の領域でそれを実践したとしても、半分くらいは「アート」なのだろう。

 

PS

写真は自宅近くに通る旧中原街道の戸越不動尊。立派な木は江戸時代からあるご神木と書かれている。この街道を江戸と武蔵の国を行き来していた人々も、紅葉する季節に脚を止めて眺めていたことだろう。スマホなどない時代は、静かに佇んで眺めたりしていたのかな。

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