モノクロ現像の失敗

公開日: : 最終更新日:2014/11/25 ロンドン芸大 / Uni Arts London, 写真学び / Photography study

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今日は、フィルムカメラに入っているILFORDのモノクロフィルムをそろそろ現像したいと思い、後どのくらい残っているかをみたところ20枚残っていました。
このフィルムは、最初のほうにRichmond公園の草原で数珠のようにつながって 歩いていた鹿と夕日を撮ったのでした。ロンドンもちょっと郊外にいくとそんな風景が広がっています。夕日の中に浮かび上がる鹿たちはあんまり聞いたことが ない声でなにやら交信しあっていました。ぼくにはビヤンビヤン聞こえました。ここはアフリカのサバンナか、と思うような景色でした。

一定数使い切らないと現像できない、もしくは途中で取り出すとせっかくのフィルムがもったいないというジレンマがあります。
こういうのは、デジタル時代に どっぷりつかってしまうととても不便な感じです。でも、もしかしたら、使い切らないともったいないからといって撮った写真にも面白みがあったのかもしれま せん。我が家の場合、そういう場合は、だいたい猫でした。
さて、午前中にグリーンパークまで歩いて紅葉の撮影でフィルムを使いきり、午後から学校の暗室に行きました。まだ一回先生とやったっきりだったので、メモを取り出して順番を追っていく必要があります。

必要なのは、現像タンクという蓋のついたバケツのようなもののセット一式と3種類の薬品です。

完全な闇のなかで、フィルムを缶切りのようなもので開けて、現像タンクの中に光に触れないように仕込みます。この中には明かりは全くない一人だけの空間。
手探りでごそごそとやっていく。慣れるまで暗室の中では結構ドキドキします。まずほんとに何も見えない。それと作業の手順に不慣れであるとい うことの両方が影響します。作業がなれれば、自ずと心の目で見えるようになるんじゃないかなと・笑
つぎに現像液をフィルムのタイプにあわせて調合し流しこんで、シェイクとステイを5分間します。
その後、停止液と定着液でも同じことを繰り返し、そのあと真水で洗浄すること20分ほど。
最後は、乾燥機に入れて吊るして1時間ほど待ちます。

まあ、手間がかかるプロセスのようにも見えますが、これはこれで面白いです。
何か形あるものを創りだすというのは、身体を動かす作業も当然あるべきものだと思います。

前回は、ネガフィルムにかなりダメージや汚れが入ってしまったので、今回は暗室での作業を丁寧にやりました。そして、水洗いも丁寧にして薬品の洗い流しに務めたつもりです。

ここまでは完璧!と思っていたのですが。。。

その後、とりいそぎ出来を確認するためデジタル現像室でスキャンしてみると、コマの下三分の一が飛んでいる・・・。しかも全部。
更に最悪なのは、鹿の行列を楽しみにしていたのですが、そこの6コマが全滅です。
一体なにがいけなかったのだろうとレビュー。

はっと気が付きました。現像タンクに薬剤を流し込むためのノズルを忘れていた。

メモにはしっかり記載されていましたが、その日に限ってイラストで必要なものを描いていたためノズルだけ描くのを忘れていました。
どうりでロールが固定されずカタカタ中でいっていたわけだ。あと、薬剤流しこむときに、あれ、光少し入ってしまっているんじゃないか・・・とほんの数秒思ったのでした。

結構へこみますね。
ちょっとのミスでダメになるというものが最近は少ない気がします。もちろん、ご飯をたくときに水を入れすぎてまずい飯を食べる羽目になった先日のことを ちょっと思い出したりしましたが、そんなもんは一日我慢すればいい。沸いたと思った風呂に入ったら水だったというのも、凹むけどすぐ取り返しがつく。
もうちょいまともな例なら、メモリーカードは消しても上書き前なら復活の方法もある。

しかし、光を上書きしてしまうというのは、不可逆なのです。
同じ瞬間というのはないんだ、ということの意味がわかった気がします。

正直、プロジェクトの重要な写真が入っていたとかではないので、そこまで深刻度はないですが現像後にどんな絵があがってくるかというのは、結構ワクワクするものです。
それは、たとえれば、デジタルでその日のうちに見えることとは違って、かつての瞬間を大切に先送りして温めて、自分の中でぼやけかけた記憶とうまくつながるプロセスなわけです。

午前中から重いカメラを二台もって歩き続けたことと、暗室作業とスキャン。このガッカリ感は結構な疲労感を連れてきました。おまけに5時なのにもう真っ暗だし。

写真のコンテクストと批評の近現代の勉強をしようと思って夜まで体制でしたが、早々に家に引き上げました。近年、あんまり凹んだりしませんが、今日はちょっとしました。

いい教訓になるだろうので、失敗ネガはとっておいて次からは気をつけよう。

追伸
こういう失敗ってアシスタントの人とかがしたら冷や汗だけじゃすまないんだろうな。
師匠の仕事が一本飛んでしまいましたとか・・・。恐ろしや。

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