フィルムカメラを入手
暗室実習がもうすぐはじまります。
いくらデジタルが主流で実際の実習や講義もそちらが多くなるとはいえ、暗室での現像を集中して学べる機会はあまりないと思うので、しっかり身につけたいです。
幼き頃から高校生までは普通にフィルムカメラを使っていました。
というか、デジタルがなかった。
古くは確かサブマリンというコニカが出していた小さなフィルム対応の防滴カメラ。
これは、釣りに夢中だった小学校時代に随分活躍しました。気持ち悪い魚がいっぱい写った写真がたくさんあります。
その次は、進研ゼミのポイントでもらったプラスチックでできた安物カメラ。これは、使えない代物でほとんどちゃんと撮れた記憶がない。現像に持って行っても、真っ暗ばかりでした。
はじめての35ミリのまともなカメラは、15歳のときにカナダ北部にホームステイに行かせてもらったときに、買ってもらったオリンパスのミューです。
今思うと、なかなか良いカメラだったのでもっと使えばよかったのに、なぜかあの頃は旅先で使ったっきりそれほど撮ってないです。きっと、フィルムや現像のお金がなかったんでしょう。
現像は一度、学研の付録で写真を現像してみよう!という回があって、そのときはじめて現像液を使った記憶があります。臭いが独特で、チェックペンのクリアペンの臭いににていたような。
暗室へのあこがれは、大人になってからのほうが強くなりました。
デジタルだと撮ったらすぐわかるし、それをPCで読みだしてもおおよそ期待したどおりの絵があがってきます。
でも、フィルムだとそうはいかない。薄暗い部屋の中で、ぼんやりと記憶がよみがえるように写真が現像されていく様子は、情緒があります。
暗室という、光の情報量を極力落とした場所だから余計にそう思えるんじゃないかという予感があります。
実際、まだ入って作業してないからなんともいえませんが、薄暗闇にとてもいい笑顔や意味深な表情、感動するほどの風景が浮かび上がったら、そういう感動は他にはないんじゃないかとすら思えます。(さて、この思い込みは正しいでしょか)
さて、そんな実習ですが、ひとつ決定的な欠落があります。
フィルムカメラを持っていない。
絵画をするのに、筆がないようなものです。
これでは、第一歩も踏み出せない。
町にはがらくた屋や中古のカメラ屋があって、フジやオリンパスなんかのコンパクトが20£前後(2500円くらい)で売られています。
まあ、現像の方法を学ぶならそれでもいいかもしれません。
ロモとかもおもしろかも。
でも、せっかくやるなら、使っていて楽しい道具を見つけたいと思い少しリサーチしてみました。
友達からは、中判カメラも奨めてもらいました。それはそれでほしくなりましたが、まずは35ミリというスタンダードが学ぶにはよいとチューターも言っているので、それに絞りました。
また、今持っているレンズが使えればなおよい。買い足すお金もかからないし、表現の幅も広がります。
そして、たどりついたのが今はもうなきミノルタのA-7です。
これは、2000年くらいに発売された名作と言われています。
MINOLTAというブランドはかつては輝いていました。
オートフォーカスをはじめて開発して搭載するなど、メカでは最先端を走っていたミノルタもデジタル化ではなかなか製品化できないという遅れをとって、コニカと合併し、最後はソニーに部署を売却しまったという歴史があります。
なぜ、そんな落ちぶれたブランドをと思われるかもしれません。
でも、MINOLTAは今持っているαシリーズと同じで僕が持っているレンズはすべて使えるというメリットがあります。
ちなみに、こちらでは、αといわずにDynaxというようです。
フィルムのαも安いものだと3000円くらいで投げ売りされています。
もうなくなったブランドをあえて買おうという人はマニアか物好きでしょうね。
しかし、当時評判がよかったA-7はさすがにやや値がはる。
ebayやAmazonなんかの中古でも100£(13,000円)くらいが相場のようです。
できれば、中古は故障がつきものなので安心できる対面販売で入手したいと考えていました。
そんな中で見つけたSOHOにある小さなカメラショップは、とても清潔感があって店員も選べば(笑)フレンドリーです。
目当てのA-7は、店の外側のショーウィンドウに陳列されてました。
その陳列の丁寧さと綺麗さは、とても好感がもてるものでした。
実際に手にとって見せてもらうと状態は非常に綺麗。箱も説明書、ストラップ付き、かつ半年間不良保証とうことで条件はいい。値段は、149£(19,000円)。
とりあえず、あまり愛想のようくない店員にあたったので、しばらくいじらせてもらうことにしました。
10分くらいあちらこちらいじってレンズをはめてもらって試しどりをしていたら、別の陽気そうな店員が「どうだい?」という風に話しかけてきました。
実は、密かにこの店員の接客を待ってました。
やっぱりキヤノンを奨められましたが、レンズ資産もあるからということを伝えると、ならそれは名機だし価値があるかもな、という話になりました。
実際、手に持ってみると、さすがにしっくり手に馴染み、更に軽い。デジタルに慣れているので、この軽さは魅力です。とても丁寧に保存されていたようなので、ここで買おうかと思い始めていました。
「これにしたいんだけど、予算オーバー。割引して!」と伝えると、
「むー、ちょっと待って」と裏へ行ってパソコンでごそごそ調べ始めました。
1~2分なにか画面で調べてから、一本ズームレンズを持ってきました。
「このレンズも買ってくれるなら、いくらか割引できる」とのことです。
でも、レンズはもう持っているのでいらないし、しかもキットのレンズなんてあまり使い道がないので断りました。
そこで、ロンドンの大学で写真を勉強し始めたばっかりなんだけど、予算が140£までしかなくて、という事情を伝えました。
そしたら、「わかった。それでいい」とのこと。
更に、「白黒とカラーのフィルムも買いたいのですが」と伝えたら、「二本おまけであげるから持って行っていいよ。電池も満タンなやつをあげる。がんばれ」とプレゼントしてもらえました。最近では、フィルムも高くなってるから、これはとてもありがたかった。
実際のところ、ミノルタの本体は在庫として持っておくより動かしたほうが店としてはうれしいようにも思えますが、気持よく接客してもらえてうれしかったです。
(キヤノンブランドの強さは、海外の方が実感します。中国でもロンドンでも、他の国の人でもみんなやっぱキヤノンはいいなあといいます。ニコンより圧倒的にキヤノン。それ以外は眼中なしって感じですね)
さらに、カメラの基本性能やフィルムの設置と拠出などを簡単にレクチャーしてくれました。
「オレも暗室で現像するけど、それは特別な作業で楽しいぞ」と言っていました。
まだわからないけど、きっとそうなんだろうなっていう気持ちがますます強まりました。
さっそく、いつもα900につけているレンズを装着してみました。
フルサイズというデジタル一眼レフを使っていると、レンズがフィルムと共用できてうれしいです。(デジタル用はフイルム用とレンズの仕様が通常は異なります)
カラーと白黒の撮影済みフィルムを実習で現像するところからはじめるようなので、早速フィルムを装着して午後の図書館への道で試してみたいと思います。
これからは、予約すれば暗室は使い放題。
うまく活用して確実でユニークな技を身につけたいものです。
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