コース振り返り ロンドン芸術大学 ABC Dip. Photography
公開日:
:
最終更新日:2014/07/31
ロンドン芸大 / Uni Arts London, 写真学び / Photography study Course work
ース振り返り
*写真は大学にある”井戸ギャラリー”。井戸のように凹んだところにある。
9月からはじまったLCCのABC Diploma in Photographyコースが先週のアセスメント面接とポートフォリオ審査によって終了しました。
せっかく時間に余裕があるので少しコースについて振り返りをしてみようと思います。
一年の専科コースで54単位が割り当てられていました。こんな内容でした。
Photographic project planning, implementation and review(フォトグラフィックプロジェクトの計画、実行、評価) 16
Presenting photographic images(フォトグラフィックイメージの発表方法) 8
Digital photo imaging techniques(デジタルフォトイメージ技法) 8
Exploring photographic imaging(フォトグラフィックイメージの探索) 8
Photographic darkroom skills(暗室技法) 8
Pixel-based image manipulation(ピクセルベースのイメージ加工法) 8
しかし、これは建前上の割り振りである部分もあって、実際は次のような感じ。
項目ごとにクラス評価と個人の反省を書いてみよう。
Photographic project planning, implementation and review(フォトグラフィックプロジェクトの計画、実行、評価) 自己評価 やや不満
一ヶ月に一回課題が出ました。課題提出の週の金曜日に、講師3人による講評会がありました。
お題は下記の7つ。
River Thames
Street Fashion
Forgotthen
I Live Here
Self Portrait
Celeblity shooting
Duck and Burn
一応、シラバスにはどのように進めるのかが書かれていましたが、それほど体系的に教えられていたとは思えません。事前にプリントの配布があり、その3週後 くらいに課題提出と講評会という流れでした。内容の説明が配布のみだったこともあり、学生が意図を無視していたりするのを講評会の段階で指摘されることも ありました。25人4クラスが一同に会して開催されるので、5、6時間の長丁場になるのも学生からクレームが出ていた点です。
まあ、それでも100人近くの作品を見ることができたというのは、同じテーマでもアプローチが全然違って興味深かったです。また、課題発表後に3週間程度 時間に余裕があるというのも徐々に理解できました。結局、どれだけ準備に費やすかは学生に委ねられているのです。シャッターを押すのは一瞬。でも、どれだ け被写体のことを知っているかや、撮影現場に気を使っているか、また撮った写真を加工しているかなどがプレゼンテーションのときにしっかりわかる気がしま した。
Pixel-based image manipulation(ピクセルベースのイメージ加工法)
Digital photo imaging techniques(デジタルフォトイメージ技法)
Presenting photographic images(フォトグラフィックイメージの発表方法)
自己評価 満足
AdobeのPhotoshop, Bridgeについて集中的に学び、課題をこなしました。
この授業はかなり役立ちました。デジタル写真を構成するピクセルの定義や、解像度をはじめ、写真って見るモニターによって色が若干変わってしまうのだけ ど、それを統一する方法など基礎的なことから、シワやら陰やら修正する方法、展示会の印刷用に写真に追い込みを掛ける方法など、デジタル時代の写真には欠 かせない技術を二人の先生から学べました。JeffとSimonはどちらもプロフェッショナルとして活躍されてる方で満足度が高かったです。
発表方法については、スライドショーの作り方をBridgeやパワーポイントで教わりました。しかし、どちらも会社員時代に嫌というほどやっていたので、新しい気づきはありませんでした。
自分で実際に作品を作るときに、1枚あたり何秒で切り替えればいいかやレイアウト、背景などを試行錯誤した方が多くの学びが得られした。この分野は座学より実践と反省のくり返しが重要だと思いました。
Photographic darkroom skills(暗室技法) 自己評価 満足
熱心なクイントン氏による実習でこれも満足度の高かった内容。
白黒が中心で、フィルムの現像を実際にやり、写真用紙への焼付けまでを学びました。また白黒とカラーでは何が違うのか、白黒である意義などについても考える時間がありました。ただ、人数が多すぎたため隔週だったのが学生の間では不満になっていました。
その声をきいたコースダイレクターが、カラー現像の授業を隔週で開いてくれたので、そちらもなかなか面白かった。
ただ、僕は次第にデジタル技術の方に強い興味を持つようになったため、結局経験としては面白かったですが、今後どのくらい実践するかは未知数です。理由の ひとつは、もともとデジタル技術に興味が強くてメーカーで働いていたくらいなので、時代の最先端を追いかけていくほうが楽しいという性格の問題と、暗室が ないとできないというのは大きな障壁だと感じたこともあります。
Context and history of photography(フォトグラフィーの文脈と歴史) 自己評価 大変不満
この科目は相当不満でした。毎週金曜日に行われる予定でしたが、実際最初の数回だけで、あとはゲストスピーカーが職業人としての取り組みを話す場になっていました。まあそれも悪くはないですが。
もともとこのコースがDiplomaレベルであることからも、理論や歴史より技術の習得に力を入れていることを実感しました。
あまり期待せず、地道に本や気になる作家の写真集、ギャラリーなどを自主的に参照する方が学びになります。このあたりは大学に頼っても仕方がないかなと割りきっていました。
このコースの後に本命の修士課程への進学を考えていたので、特にドキュメンタリー写真の歴史や手法について概要と好きな写真家数名について調べエッセイにまとめました。これは後に面接のときに効果的でしたし、自分のプロジェクトを行う際にも参考になりました。
Optional Introduction to photojournalism (フォトジャーナリズム入門) 自己評価 大変満足
最終学期の選択集中コース。Bob氏によって教えられましたが、すばらしいコースで感動しました。
正直この授業がなければ、この一年のコースは結構物足りないものになっていたことでしょう。Bobのモチベーションは高く、講義内容も洗練されていまし た。毎回、かなり厳しい課題を短い提出期限の中で課しましたが、フィードバックも適切で、講評会のやり方もすばらしかった。
素晴らしかった点を箇条書きでまとめると、
1. 1回目の授業で25人の出席者のことを憶えて既に名前で呼んだ。
2. 課題テーマがドキュメンタリーの方法論と技術と満遍なく短期間で学べるようになっていた。
3. 講評が建設的。25人分の課題を名前なしで1分ずつ見せて、出席者は全員に技術、被写体などに点数をつけてコメントをポジティブ面、ネガティブ面に 分けて書く。その後、その用紙をシャッフルして配って大きな声で読み上げさせることで、躊躇や先入観を排除した批評が可能になった。
4. 分析日記の必須化。課題プロジェクトにはA42枚ほどの振り返り日記の提出を義務付けた。内容はリサーチ内容、採用した設定・技術、編集方法、計画との違いなど。全部赤ペンが入って戻ってきた。
取り組み課題:
大学近所のうらぶれたマーケット撮影
ローカルニュースの調査と撮影
宗教指導者のポートレイト撮影
セルフポートレイト
コースメートポートレイト
シャッタースピードの技術応用
絞り技術の応用
マニュアルモード利用徹底
フォトストーリーの理解と作成
著作権の理解と保護
・その他
大学というのはコース内容だけではなく、そこで出会う学生同士の交流からも多くを学ぶことができます。ただ、このコースは一番基礎のレベルなので学生の習熟度には大きなばらつきが見られました。
入学時に作品提出と面接は行われているため、全くできない人はいませんでしたが、一眼レフにはあまり馴染みがない人もいれば、プロとして長らくスタジオ勤 務して一度技術のブラッシュアップのために来ているという方もいました。中には、BBCでラジオやテレビ作ってましたと言う人や、政治哲学の博士で先生で したという人もいてこのあたりのばらつきは、純粋なファウンデーションより面白いところです。
写真をはじめ芸術の分野は、その人の精神的充実や深さが重要だと思います。特に写真は、何に気がつけるか、その気づきをどう写しとるかが重要な点でもあるので、そういった異分野からの学生の作品はとても興味深かったです。
さて、学生同士の交流ですが、スタジオや暗室は健康や安全上の理由で二人組みでしか予約利用することができなかったため、一緒にする学生とは仲良くなるこ とができました。ただ、スタジオも練習として2学期まではほぼ毎週使いましたが、徐々に外に目が向き始めたので頻度が下がって来ました。大学の設備は、 UKでもかなり充実しているようですが、結局デジタル時代になってくると暗室やデジタル加工室などにわざわざ行かなくても、自宅のパソコンでかなりの部分 を代替できるようになります。また中判や大判カメラも貸出してますが、経験のために使いましたが、継続的に使うかと言われればノーです。そう考えると、使 わにゃ損と思いながら、一方で自分の機材で自由にできるならそれでいいかなとも思います。ファッション系で多くのストロボを使うとかだと、学生の間は借り たほうがいいと思うけど。
さて、本コースも実は政府からの財務援助の問題で一旦クローズします。
すべてのDiplomaコースがLCCではクローズで、あるところからは、基礎教育の軽視だという批判もでてるそうです。ただ、コース名が以前はプロ フェッショナル・ポートフォリオ制作コースだったりもしているので、名前が変わって来年あたり復活するという話も聞いています。
異分野から写真の世界に入るには、伝統・最新の基礎部分が学べていいコースかもしれません。また、さほど忙しくないコースなので、一年間写真について自分なりに考え、計画して実践と批評を繰り返すにはいいコースです。
ただし、自律学習の精神がかなり問われます。上記のレビューにも一部書きましたが、コースはあまり体系だっていません。シラバスは立派に書かれています。 でも、おそらくそれは建前上あるフォーマットに基づいて書かれてのでしょう。数年前に学生がこのコースの改善を求めて嘆願書を学長に出しているのも最近知 り読んでみました。ほぼ同じようなことが学生から訴えられていたのを見て、ちょっと残念には思いました。そういう意味では、一度解体して再構築することは 悪くない方向性だともいえます。
それでも思うのは、写真は座学ばかりではないということです。時間を区切って知識を自ら習得し学校の施設をフル活用して、実践とレビューをすることに価値 があるのではないでしょうか。いろいろ意見はあると思います。特に留学生の支払う学費は、130万円ほどになりますから非常に大きな出費になります。
数年前に大学に問い合わせたところ、基礎のこのコース1年、修士1年の2年計画でそれなりの習得と経験はつめるということで、まずはこのコースにやってき ました。学部3年は僕の年齢と資金を考えると得策ではないとのアドバイスでした。確かに、それしてたら40歳になってしまう。。。
受験の結果、希望の修士課程にも進学できることになりました。
ということで、ウォーミングアップはできましたので、次はいよいよドキュメンタリー写真の修士課程に挑戦です。そこでこの分野で立ち上がってみせます。
この記事へのコメント
1. Posted by Yone 2012年06月18日 13:20授業終了お疲れ様!
これからいよいよ本番(?)だね。
コッソリとチェックします。
ところで、夏休みはどうするの??2. Posted by Shin 2012年06月18日 19:50Yone,
7月半ばから8月末は英語の集中講座に出ることにしました。Weekdayは終日缶詰です。多分、人生最後の集中特訓です。取材はコミュニケーション能力 がとても問われるし、作品のストーリー書いたり修論書かなければなのでばっちり鍛えてもらいます!目指すは、聞き手や読み手が物語に入っていけるような洗 練されたBritish英語の使い手です。
でもオリンピックは楽しむつもり!
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