日常になる前の風景 ロンドンにやってきた
はじめてには、わくわくがある一方、不安も入り交じる。不安の方が先に立つこともあって、必ずしも快適とはいえない。
でも、それは「一時的」であり「限定的」。その気分を楽しめるようにしている。
2009年2月、慌ただしく羽田空港から上海へとたどり着いた。
はじめて乗せてもらったエグゼクティブクラスを堪能するまでもなく、3時間少々で辿り着いた上海虹橋空港は、近いとはいえ目にする風景は全くの異国だった。
お迎えのAさんは20代後半と思われる女性で「今日はいろいろお手伝いしまーす。でも、実は私生活能力そんなに高くないんですよ!携帯とかどうやって契約するのかあんまり知らないの」とフレンドリーな日本語で自己紹介。
言葉ができれば問題ない。日本語ができる彼女が空港まで迎えにきてくれなければ、土地勘も言葉もわからないので相当苦労したはず。
社用車に乗りこむと東京でいうところの首都高へと入った。
車窓から見える初めての中国は、小雨が降って寒く、街全体がもやってみえて灰色と黄土色の混じった景色だった。
それに、首都高から見える高層ビルとその間を埋める低層住宅のコントラストに、日本とは違った格差の存在を感じながら、肩に力が入ったのを覚えている。
カーチェイスのように次々と車線変更をする前後のタクシーの間をわりと大人しい運転の社用車が届き駆け抜けて行く。この風景や荒々しい交通も、いずれ当たり前になってしまうのだろうなあと思いながら眺めていた。
実際、一年もたたないうちに、慣れてしまってスリルはもう感じられなくなった。
それから2年半後。
2011年8月18日。灰色の空、気温13度のすでに秋に入ったかと思われるロンドン・ヒースロー空港についた。
ロンドンは2007年7月の出張のとき以来。そのときは、やはり会社の手配がされていて迷うことなく荷物を持って車にのるだけだった。
今回は多くの荷物を持って一人でフラットまで行く。
ヒースロー・エクスプレスという成田エクスプレスのような列車があって、それに乗って地下鉄の最寄り駅・ウォータールーまで向かった。
車窓から見えたのは、ロンドンの特徴的な曇り空と雨。
35度の真夏の日本から一気に13度の世界へやってきたうれしい驚きと共に、郊外から市内へ入る風景をぼんやり眺めた。
Suicaみたいなカード(オイスターカード)はどこで売ってるんだろうとか、携帯ないけど大家にどうやって連絡しようか、暴動の余波ってあるのか、など考えていた。
駅のカウンターの係員は、とても親切だったし、例えば通路に重なったときにはお互いが譲りあうということが普通にされている(中国でのぶつかり合いに慣れていた)、少しずつ気分が高揚していくのがわかった。
ブラックキャブ(タクシー)も乗ったのははじめて。
中国のボロボロで運転手が威張っているタクシーとは随分違う。というか、荷物を乗せやすく3分の2が後部座席になっていて快適。これからはタクシーに乗る機会も滅多にないと思ってそのときは十分満喫した。
たどり着いたのは、実際の物件は見ずに知り合いの紹介で決めたフラットだった。築50年以上はゆうにたっている、趣のあるつくり。
信頼できる人が吟味の末に選んだところは、信用できると感心した。上海留学時代の経験で10代の学生と一緒になる学寮は嫌だったし、到着後に自分でフラットを探すとなるとそれなりに大変だと思うので、この選択は正解だった。
フラットには台湾、韓国の人が住んでいる。みんな綺麗に使っているし、すごく静か。(静かさ重要!)
そして9月からは大学。そこでの出会いに期待している。
やっぱり期待と不安(期待7不安3くらい?)の気持ちも。
そんな日常になる前の風景。この気持ちを大切にしたいと思う。
思い起こせば一番はじめは、愛知から東京に進学のために乗った新幹線だった。銀座や有楽町の風景が見えてくると、憧れの町に上京してきたのだ!と10代だったときに思った。
それから10数年が経ったけど、あの高揚感は今にもつながっている。
それは新しい何かをやってみるときに、よりはっきりと感じられるし力になっている気がする。
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