アートリサーチにどれだけ時間を費やすのか/How long do you spend for your research of art?

公開日: : 最終更新日:2014/08/14 ロンドン芸大 / Uni Arts London, リサーチの方法 / research method

今日は一日自宅で編集することにしていたけれど、窓の外に広がる一面の青空を見ていたら無性に外出がしたくなった。せっかくなら、自分のアートワークにも活きるところへ行こうと、ナショナルギャラリーに西洋絵画を観に行ってきた。

長い間苦手としていた絵画のギャラリー見学も、昨年の夏、記号論を学んでからはいろいろ見るべき視点が増えた気がする。また、先日、Parisに行ってオルセー美術館を見終えた帰った時に、友達に「オーディオ案内使わずに見たの?せっかくの時間がもったいない!」と言われて確かに納得。確かに、前提知識があれば全く違うものになるだろうから、それ以降必ず音声ガイドを借りてじっくり時間をかけることにしている。

ということで、今日は大体2時間ほどかけて広い館内をオーディオガイドを聴きながらまわった。膨大にあるコレクションの中から40作品にクローズアップして紹介してくれている。全部有名だけど、一般的にもゴッホのひまわりとか、レオナルド・ダ・ヴィンチ、モネなんかは広く知られている。

音声案内はほんとによく喋る・笑。一作品2〜3分は普通で熱が入ったものは5分近くあるのでは。基本は、何が描かれているか、誰が依頼して描かせたのか、技本、歴史的背景など。今日気になったのは、作家がその対象を調べるのにどれくらい時間を費やしたかである。

一つすごいなと思ったのは、このお馬の絵である。

George Stubbs(1762年)による作品。彼は、この制作のためにリンカンシャーというイギリス東部の田舎に住んで、18ヶ月かけて馬を徹底的に調べあげたそうである。死んだ馬を解剖したものをスケッチしたりして、最終的には馬の解剖学(The Anatomy of the Horse)なる書物にまとめてもいる。その成果がこの油絵である。筋肉やその動きについて、躍動感を表現しつくしている。それにこの絵は、292 cm × 246.4 cm (115 in × 97 in)の大きなキャンバスに描かれていて、迫力もすごい。まさにリサーチ&クラフトのなせる技だと思った。

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ちなみに写真と文章をまじえたフォト・エッセイというスタイルを1950年代に確立したユージン・スミスは、カントリードクターという田舎町の医者を取材したドキュメンタリーの制作に通算3年を費やしたという。もっとも、それで編集部と対立したりといろいろトラブルのものにもなったようだが。

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[W. Eugene Smith’s Landmark Photo Essay, ‘Country Doctor’

Read more: http://life.time.com/history/life-classic-eugene-smiths-country-doctor/#ixzz2hB0Uvc5w]

正直、調べれば調べるほど物事の奥行きは広くなっていくはずで、きりが無いといえばない。仕事でやっているならば、依頼主がいるはずなので締め切りがタイトなのでかけられる時間は自ずと限られる。ぱぱっと調べてわかったようにまとめるということも多いだろう。

一方、闇雲に時間だけかければいいというものでもない。効率もある。

しかし、Stubbsのように研究成果を絵だけではなく論文としても出版できてしまうほど18ヶ月かけて調べるというのはインターネットもない18世紀半ばのことを考えるとすごい。2ヶ月とか1年とか、そういうスパンでプロジェクトや作品を仕上げたいと思うのは、悪いことではないけれど、丹念に調べたり関係を構築したことが形になるにはそれなりに時間もかかることを覚悟しなければならないと絵を見ながら考えたりした。

40点に絞られたオーディオガイドだったけれど、それだけでももう十分過ぎるほど。絵を見て感じるだけでなく、背景知識や分析を一緒にしていくと結構疲労するものである。でも、リサーチにかける作家の情熱や時代の流れとは異なる構図への試みなどいろいろ収穫を得られた見学だった。

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