作品を見る時間を作家がコントロール Ayşe Erkmen: Intervalsより/The artist controls the audience’s viewing time

公開日: : UK, 写真学び / Photography study

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あなたは、丹念に作り上げた自分の作品が、展示場で1秒くらいで見終わられたらどう思うだろう。芸大で学ぶ以前の自分は、絵画だろうが写真だろうが、よほどすっと自分に入ってくるもの意外は、瞬間で見終えた気分になっていた。しかし、自分が作る側に参加してみると、その見られる時間に問題意識が向きはじめるから、都合のよいものだ。

そんな問題意識を再度持ったのは、Barbican Centreで行われているAyşe ErkmenさんによるIntervalsという展示会を見たからである。

お伽話などの物語に出てくる風景画や建築物の内部などを巨大に描き、それを一定の間隔で上げ下げして、観衆はその間に一定時間留まって観察する。ひと通りの作品を見るのに、約16分。

この展示会で面白いなと思ったのは、作品を見る空間と時間を作家側がコントロールしている点である。

音楽や映像作品は、観衆が作家が作ったタイムラインに添って、時間を費やしながら見なければならないが、絵画や写真は見学者が絶対的な閲覧時間の支配権を持っている。絵画は、作家は何年もかけて描き出すのに、見る人によっては一瞬で通りすぎてしまう(かつての自分でもある)、制作者と閲覧者の関係性がアンフェアなものだと思ったりもしたこともある。

下の図は、時間支配が誰によって行われているかを簡単に記したものだがaudienceによれば閲覧者が見る時間を決め、artistに行けば作り手がそれを決める。小説などの本、雑誌などはその中間的な立ち位置になる。これらは作品を載せるメディアの特性。

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もっとも、その分、映像作品を観たりするのは一定の時間を費やす覚悟が必要だから敷居が高くなり、写真や絵画ならぱっと見られることからも見てもらいやすさという点では有利なのかもしれない。そこからどれだけの情報や感動を伝えるかとなると、それはまた別次元の評価がでてくるのだろう。作品の文脈理解を閲覧者側にかなり求めるのも絵画や写真の特徴。もちろんそれは見る人全員に求められるものではない。

さて、この展覧会では見学者は仕切りで閉じ込められてしまうわけである。

作家の意図としては、巨大な絵画を展示するために必要な空間を確保するためにこの方法だったのかもしれない。ただ自分の場合は、上記のような閲覧時間を考えたりしていたから、閲覧時間管理の視点からも面白い展示方法だと思った。はたして、このような方法で一定時間作品を見せていくのは、作家側のエゴなのだろうか、それともスライドショーや映像などでは当たり前なのだから普通なのだろうか。

個人的感想としては、風景画で16分なら問題なく楽しめた。しかし、同じ16分でもより抽象度の高い絵や、同じ内容でも時間が延びて30分だったら辛いと感じたかもしれない。

結局、静止画である以上、見る方としては、積極的に作品の解釈に関わりたいと思うため、結構疲労する可能性が高いのであるこの展示会のように、最適な時間配分がなされていれば、この方法はとても面白い方法だと思った。

展示会は2014年1月5日までロンドンにて開催中。様子は下記動画からも見られる。

展示会WEB

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