よき生産者になるためには、よき消費者であれ

公開日: : ゆく未知/考えごと, 本 / book

20代のころに読んだ本に書いてあった言葉である。

確か、読書家で有名な立花隆さんの本に書かれていたと記憶している。

生活には、文章が溢れている。

特に、スマホが普及してからは、思いついた心のつぶやきのようなものから、日記のようなものまで毎秒単位で更新されたものを見ることができる。

読んでいれば、そこそも暇つぶしになるかもしれないし、ときどきとても参考になるイベントの告知もあってためになる。それに、最近では大きな企業でもフェイスブックのグループページをクローズにして、プロジェクトの情報をやり取りしているところもあって、仕事でも欠かせない時がある。

しかし、ほんとに四六時中チェックしなければならない情報があるかといえば、ノーだと思う。

せいぜい一日1〜2回見とけば充分。そこで消費されている時間は、もっと質の高いものを閲覧、感じる、思索するのに使うのが頭の栄養にはいい。

そんなことを思ったのは、万葉集を読んだから。

2008年から学生時代の友人たちと、数ヶ月に一回、和洋中から古典を選んで読む会を続けている。

「川の上の つらつら椿 つらつらに 見れども飽かず 巨瀬の春野は」(五六 春日蔵首老)

「帰りける 人来たれりと 言ひしかば ほとほと死にき 君かと思ひて」(三七七二 狭野弟上娘子)

声に出して読むと、情景やそのときの思いを感じられる。一方、黙読しただけだと入ってこない。歌であるからには、やはり音ともに成り立つものなのだろう。

短い和歌の中にある思いを解説が数ページ続くものあり、短い文章の中にも奥行きがあり、音にも味わいがある。

1300年ほど前の日本人が詠んだ歌に共感を覚えられるほど、喜怒哀楽を思う気持ちはそれほど大きく変わっていないのではないか。中学、高校とそれなりに古典を学んだはずであったが、共感というレベルで味わうことがなかったことを不思議に思う。

しかし、和歌を詠んだ人の思いに至るほどの人生経験もなく、精神が成熟していなかったため理解が及ばなかったのだろう。現代社会、これだけ覚えるべきことが多い中で、わざわざ文法まで学び原文を読むことは、いわば過去の日本人からメッセージを改変なく受取ることである。そういう思いに至るには、高校生でも若すぎた。

万葉集を音読しながら、特定の誰かに思いを届けるために出てきた言葉の美しさに感銘を受ける。それとともに、自分が普段たくさん消費している文章の多くについて振り返りを行う。

やはり少しSNSを使いすぎている。使うのが悪いのではなく、使いすぎることが問題。

そして、10年前から数年までこつこつとメモとしてブログを考え書いていたのに、それも全くしなくなっていることを憂いた。

何かを一気に成し遂げようとしてはだめで、求めるものはソーシャルな受けではなく、個の考えの蓄積と特定の読者との対話なのだ。

ということで、まずは、iPhoneからFacebookのアプリを削除し、より論として存在しているものへ視線を向けることに決めた。その最初として、まずはこのブログを考えのメモとし、あいも変わらずテーマなど絞り込むことはせず発散と収束をしていくことにした。

さて、和歌にはリズムとメッセージの両方があっていい。会議の前とか最後とかを和歌で締めるというのはどうだろう。もっと仕事に意図的にロジックだけではないアートの要素が入り込む隙間あるとよいなと思う最近です。

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