個展の批評。アートにおけるリサーチ。

授業の一環で、Bauhausの個展を見に行きました。

Bauhausとは、1919年創立ドイツの著名アート・スクール。今回は1933年にナチスに廃校に追い込まれるまでの作品と歴史的経緯が展示されていました。

場所は、Barbican

毎日朝10〜15時まで教室で缶詰になっているため、外出できる!やったーとなったわけですが、これは甘かった。

入り口に集合した際、チューターが待っていてA4プリントが配布されました。

“Bauhaus: A Critical Visit”

個展を批評せよ、ということ。さらにグループ分けがその場で行われ、20人が4つに分けられました。なぜかというと、翌々日に5分間で課題について発表せよ、というお題があったから。

課題は、大きく4つに分かれています。

1.Bauhausムーブメントの重要概念・理念

2.そのムーブメントの理念についてあなたの意見と根拠

3.展示会に対する意見

4.グループワーク

 a. Bauhaus教育の理念の中で本コースへの応用

 b. ロンドンオリンピック開会式への応用

 c. ロンドンの都市計画への応用

4は選択制だったので、我がグループはaを選択しました。

bは相当難しそう・・・。

ちなみに家のグループは、Wimbledon, Saint Martins, LCCの混成チームでした。専攻は写真、Fine Art、プロダクトデザイン。 

個展は2時間くらいで見て、そのあとミーティングを持つようにとのこと。一応、宿題で2つ以上の個展批評記事を読んでくるように言われていたため、僕はポジティブなものとネガティブなものを新聞から選んでいきました。Guardianのものは、酷い個展である、という批評。Telegraphのものは、すばらしい!というもの・・・。

個展は、結構大規模で、普段素早く見てまわる自分でも1時間ちょっとはかかりました。しかし、入り口でいくら待っても他の学生たちは出てこない。どうしたんだろうと思って、催促も兼ねて見に行ったら、まだ入り口から3つ目くらいの展示会場にいて、推定あと2時間以上はかかるという進捗でした・・・。

でも、みんなただ見てるのではなく、スケッチブックに何やら描いたり書き込んだりしている。

どれどれと見せてもらうと、印象的な作品をデッサンしたり、レビューを書いてるんです。さすが、美大出身者でそのデッサンは僕には真似できないものでした。

そのとき、強く思ったのは、芸術を専門的に学んできた人たちのリサーチの方法論についてです。

以前、創作日記がイギリスの大学では大変重要視されているという記事を書きましたが、それにも通じるところがあります。

社会科学のリサーチに慣れている自分には、創作のために気づきをデッサンしていくタイプのリサーチ方法は新鮮でした。

アートで重要なのは発見や気づきを再構築することであると、先日ロンドンの街並みと人を描き続けているベテラン絵本作家が講義に来て自らのリサーチ日記を見せてくれました。とても刺激的な内容でした。

結局11時からはじまった見学は、自分は1時には終え、その他の学生は2時までかかりました。もう今日は無理だね、ということで打ち合わせは明日に延期に。

はじめは、やれやれなんて非効率だと思ってしまいましたが、彼らのスケッチブックを見ていたらそんな気持ちは消えました。

コースで学んだVusual Languageの分析理論を使って作品を分析していったら、そりゃ簡単には済みません。そんな作品が何百と並んでいたわけなので、3、4時間かかります。中には、次の日もう一回行くと言っていた人もいたほどです。

さて、今回の個展で我チームが選んだ重要な理念は次のものでした。

たくさんあったのですが、これらの3つが自分たちのコースには重要だと考えたわけです。

Return to craft: Body & Spirits(工芸への回帰:身体と精神)

 伝統や知識偏重だった当時ドイツの教育から、市民に開かれたBauhausと斬新な学びのスタンス。知識を得たら自分の身体を実際に使い、自分のものへと昇華させていくことの重要性。これはアート・スクールには欠かせない要素だし、多分、実学を重んじる学校全てにいえること。

Play for creation(創造のための遊び)

 子供の心を忘れないこと。常識から開放されること。躊躇しないことが創造には大切なのだということが、作品からも伝わって来ました。

またPlayには、余白という意味合いもありますね。これもまた重要。

Peer Study(相互学習)

 組織が永遠にオンラインオンリーにはならないだろうなという理由の一つには、そこに集まる人々との言語・非言語を通じた対話があるからだと思います。Bauhausもそれを重視して、学生や教師が一緒になって相互に励まし、批評し高いレベルを目指したそうです。

これはほんとに重要。優れた大学や組織というのは、自ら動き出して学び実践するグループが自然にできたりする。これをこれまでもいくつも経験してきました。

基本理念の理解と大学への提案を含めて無事プレゼンも終えました。5分という短い時間の中で、みんな理念を上手く自分たちへの視点へ昇華できたのではないかと思いました。

Bauhausのデザイン、合理的で産業アートとしてもパイオニア的存在でした。良くも悪くもドイツのデザイン!という印象だったかな。

結局、普段の授業よりずっと労力が必要でぐったり疲れましたが、学びや気づきも多くとてもよい課外授業になりました。アート・スクール面白いなあ。

以前の関連投稿:

Reflective learningって何だ?

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