ロンドン芸術大学では作品はどのように評価されるのか?/How to evaluate course works at MA course in art school?
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最終更新日:2014/07/31
ロンドン芸大 / Uni Arts London, 写真学び / Photography study ロンドン芸術大学, Course work, 芸大, lcc, ロンドンカレッジオブコミュニケーション
小学生のとき、美術担当に柴田先生という人がいた。
いつも半分酔っ払っているような先生で、言動も行動も奇っ怪なもので、みんなから「しばっちょ」とアダ名で呼ばれていた。非常にユニークというか怪しげだけど面白い50代の先生だった。
ただし、先生に描いた絵を持っていくのは、少し勇気がいることだった。
なぜなら、その評価は完全にその日の気分によって決まったからだ。ある水彩画を持っていたとき、「いいよ〜〜。合格!」と唄うように言った。おお、なんだか理由はわからないが良かったみたいだなとその日は思う。
しかし、その次の週にほとんど変えていないのにもかかわらず「ダメだ!こんなもん」とすごい剣幕で怒られるといった風。その逆のときもよくあった。
そんな感じで、10代にしてアートの評価の評価の曖昧さというか不思議さを知ったのだった。結局、気分次第なのでは。
さすがに高等教育ではそんな適当な訳ないとは思うが、じゃあ具体的にどうなっているのかは気になるところ。
アートスクールではどのように成績が評価されるのだろうか。そのことも、芸術大学に入ったときに感じた一つ気になる点だった。
アートの評価は、歌を聴くように、ある時にはその曲に深く感動しても、ある時には全然響かないなんてように、実際はしばっちょのように気分次第でいいと思う。ただし、それは個人として楽しむときという条件つきである。
一方で、その評価が複数人で共有される際には、もう少しブレの少ない評価が必要であろう。そんな意味もあって、教育機関の評価としてどのようにされているのかは、アートを個人的に楽しむというのとは別の観点で興味がある。そこには、教育の哲学も透けて見えそう。
あと、私は以前の専攻で学んだ統計学や仕事で、抽象的なこと(ブランド忠誠度とか「満足度」とか)を数値化する作業(指数化)をよくしていた。そんな観点からも興味深い。
コースがはじまると、そこはかなり明確に評価基準が公開されていることがすぐにわかった。まずコースブックに明確に表記されている上に、課題の前にチューターからどのような観点で評価するかについて言及されたのである。
以下は、ロンドン芸術大学6カレッジの学位授与コースで共通で使用されている評価基準。8項目を評価したのち、総合成績が更に記される。
●Level of Achievement/到達水準
9項目全てが、到達水準が5段階で得点化される。これが通常の課題では実技と理論の担当チューターによってそれぞれなされ、最終プロジェクトでは2人の得点の平均で決まるという。
40点未満は、落第ということ。よく、欧米の卒業生の中には、Distinctionの場合は経歴に書いたりしている人もいる。日本でいうと主席みたいな感じ?
総合得点を構成するのは、下記8要素。つまり、ロンドン芸術大学においては、下記の項目を高水準で満たした作品を「優れた」作品やエッセイと評価するということである。やっぱり、思考とか、制作過程が重視されていることがわかる。ちなみに、写真につける文章やキャプションなどで英語をミスしてたりすると、6のコミュニケーションと発表のところが減点されるので、留学生は要注意である。
これらの点数評価に加え、3〜5行程度のコメントもついてくる。これがなかなか役に立つ。どこがよかったか、どうするともっとよくなるかについて書かれている。他の大学はどうなのかはわからないけど、自分としてはこのリサーチ重視の姿勢は割りと好きなのである。
ちなみに、うちのコースの学生がこれをどれだけ重視しているかははっきりと統計をとったことはないが、そこそこ気にはなっているんじゃないかとは思う。よく耳にするのは、これから何か制作助成金を応募するときに、成績は一定の意味を持つのではないかという意見である。
私個人としては、成績はいいに越したことはないが、高いことが目的ではなくて、下記の要素が深く達成されてることが作品をよりよくするなら、各要素を意識して磨くべきかなとは思う。
もうひとつ思うのは、これらがアートを評価する全ての指標ではないし、多分評価者によってのブレもあるということ。あとは、バランス評価だから、ありえないくらい感動を呼ぶほんとは100点あげていい項目でも10点になるから、そこはあくまで学校という限られた空間での基礎と応用に関する評価軸で、社会に出て行ってからの評価とは違ったものになるだろう。
アイススケートで競技が細かくエレメント別に評価されるのと一緒。感動という点では、プロスケーターの演義とかエキシビジョンの演技は違った雰囲気を持つ。
ただ学生としては、何か整理された上で評価とアドバイスがもらえるというのはありがたいと思っている。
【University of the Arts London 公式評価シートより】
1 Research Define/リサーチや制作のテーマ設定
a research issue (question or problem); adopt and explain suitable methodology; appreciate the contribution the research makes
テーマ設定とそれに相応しいリサーチ方法について。
2 Analysis/分析
Examination and interpretation of resources
リサーチ対象の吟味と解釈について。
3 Subject/対象
Knowledge Understanding and application of subject knowledge and underlying principles
対象に対する知識や理解度。またその応用。
4 Experimentation/実験
Problem solving, risk taking and testing of ideas and materials in the realisation of concepts
新しいアイデアを活かすために行った実験やリスクをとってしてみた自分なりの挑戦。
5 Technical/技術
Competence Skills to enable the execution of ideas appropriate to the medium
アイデアやコンセプトを実際に作品にするための表現手段や技術について。
6 Communication and Presentation/コミュニケーションと発表
Clarity of purpose; skills in the selected media; awareness and adoption of appropriate conventions; sensitivity to the needs of the audience
発表方法は次の観点を吟味した上で選択されているか。制作目的、選択メディア、視認性、観衆のニーズ。
7 Personal and Professional/個人としての取り組み、プロフェッショナルとしての到達度
Development Management of learning through reflection, planning, self direction, subject engagement and commitment
プロジェクトを通しての独創性、計画性、自主性、対象やトピックに対する深い関与。
8 Collaborative and / or Independent Professional Working/グループまたは個人としての専門性の高い制作水準
Demonstration of suitable behaviour for working inclusively in a professional context
高い水準の制作物をつくりだすため、適切な選択や作業をしたかどうか。
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