ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉

公開日: : 本 / book

<Amazon.co.jpより転載>

*下流民か、自由民か。地球規模で人生は二極分化する*

2025年、私たちはどんなふうに働いているだろうか? ロンドン・ビジネススクールを中心とした、「働き方コンソーシアム」による、世界規模の研究が生々しく描き出す2025年のに働く人の日常。「漫然と迎える未来」には孤独で貧困な人生が待ち受け、「主体的に築く未来」には自由で創造的な人生がある。どちらの人生になるかは、〈ワーク・シフト〉できるか否かにかかっている。

先日、The Shift(邦訳:ワーク・シフト)という2025年の人々の生活や働きかたについてシナリオを描いた本書を読んだ。

2006年に「フラット化する社会」を読んだ。アメリカ企業の総務やコールセンターなどは既にインドに移設されているし、IT業務の多くは中国・台湾やインドに行った。あの本に書かれていることの多くは既に起きた。そういった労働市場の変化の中で、僕が最も関心があるのは、どうやってそういう時代をわくわくできる仕事とともに渡り歩けるかということ。

本書は、ロンドンビジネス・スクールの女性教授が著者である。彼女がこの本を書いた動機は、17才の息子が新聞記者になりたい、次男は薬の開発に興味があると、母親である彼女に言ったところから始まる。母親として専門家として、どういうアドバイスをしてあげられるか、という母の目線からスタートしている。そのため、柔らかく内容に入っていけるし内容に手抜きがない。

以前、会社勤めしていたときには、仕事で3年後や5年後のシナリオを考えるということをしたことがあった。PEST分析というフレームを使って、Politics(政治)、Economics(経済)、Society(社会)、Technology(技術)という4つから社会の過去、現在、未来についてまとめたことがあったが、本書ではそれを5つの変化の要素としてまとめている。

章は細かに分かれているけれど、大別すると環境整理の前半、変化についてのシナリオという前後半の内容。

〈5つのトレンド〉

●テクノロジーの発展

●グローバル化

●人口構成の変化と長寿化

●個人、家族、社会の変化

●エネルギーと環境問題

働き方を変える! 〈3つのシフト〉

●専門性の浅いゼネラリスト→連続スペシャリスト

●孤独な競争→みんなでイノベーション

●金儲けと消費/高級品→価値ある経験/幸せ

3つのシフトについてはどれも納得感がある。それに、すでにそこかしこでこれを実践し始めている人が出ている。

連続スペシャリストというのは、自分の専門分野である程度の経験を有したら、隣接エリアへ専門性を拡張していくことをいう。

これはたとえれば、ドラクエでダーマ神殿で転職をして賢者になったり、魔法が使える戦士になったりといったハイブリッドな専門家のことである。これまでは会社の中での定期ローテーションで組織調整型の人材が出世していくタイプだっただろうが、組織を超えた働き方が中心になったり、外資に買収でもされたとたん、そういう人材は行き場に困る可能性が高い。

本書にもいくつか具体例が出ていたが、自分がマーケテイング、リサーチや分析から今、アート分野で学んでいることもあり、リサーチやコンサルタントの分野とアートの分野の融合が進むという章が書かれていたことは驚いた。

連続性のある専門という文脈で、写真やドキュメンタリーを学ぶことは、自分にとってはこれまでの専門性の延長線上にある、という考えのもとでやってきたが、改めてそういう発想は間違っていなかったかも、と思った。

そのことについては、考えがあるのでまた違う回で書いてみたい。

2つ目のみんなでイノベーションというのも、この先個人事業主としての働きかたや小さな会社が増えることによって、専門家集団の連携によってひとつのプロジェクトがなされるという見通しである。プロデューサーやクリエイティブ・カタリストのような自らも関連分野の専門性を持ったリーダーやファシリテーターの存在が重要になると考えられている。

著者は、親と子の関係が主流だった現代の企業間プロジェクトの関係は、親と親という大人の対等な関係へと比率が増すであろうと指摘している。

この点はとても同意。仕事で専門エージェントを使うとき、クライアントの担当者がその分野の素人だったら、専門家であるエージェント(専門業者)に丸投げするしかないし、質のいいアウトプットを出すことは難しい。

3つ目の生活価値観の変化が消費から体験や幸福に移るというのは、先進国ではすでに起こり始めている。よく、デフレや給与格差のために消費が減衰していて、若者が車に興味なくなったり、持ち家もいらないというのは残念なことだという批判もあるが、生活者の価値観が成熟に向かったのであって、批判される対象ではないと思う。

この前の旅で、インドやタイに行ったときや以前中国にいたとき、やっぱり成功の証明として高級車に乗るとかブランドバックを持つという傾向は強かった。

そういう価値観から開放されて、自分のライフスタイルにあった消費や労働が選べて、心の満足感が得られるならならそれは悪いことではない。

ただし、この本では、それを専門家として主体的に仕事をリードしていけてなおかつ自分らしい持続可能な生活ができる人々のことを書いている。流れに身を任せ、低所得になり、いわゆる下流生活で満足しましょうという発想とは真逆である。

今のようなグローバルの時代では、ライバルは同じ会社の同期ではなく、遠くはなれたアフリカやインド、中国のどこかのオフィスにいる人になるのである。

僕自身としては、主体性を確保していくためには、高くユニークな専門性や国境を超えて働くための語学力や生産性を維持するためのITスキル、異なる価値感の中で生活するタフさや好奇心は、大切な要素だと思う。そしてお金だってひとつの力だから、あればあるだけ自由度は増すから重要な要素である。

本書は、事実を積み上げてありうるシナリオを書いているので、論理の飛躍もなく手堅い一冊だと思う。この本が多く読まれたことにより、2025年より前に多くのことは実現するのかもしれない。

どんな業種にいる人にとっても、何らかの準備した方がいい具体的な取り組みが見つかる良書だと思う。

PS

原書はUKで出版されたもの。The Shiftはこちら

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