一眼レフで動画を撮る。しかも、動きながら揺れずに撮るには。Steadycam Merlinについて。
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最終更新日:2014/08/04
動画撮影 / filming, 製品 / products Course work, Movie, Rethink
最近は、一眼レフでも家庭用ビデオカメラを上回る映像が撮れるようになった。映画やアイドル、アーティストのPVにも使われるなど、プロにも認められる水準になっている。
2008年11月にCanonの5D Mark2という一眼レフが発売されてから、ビデオカメラだけではなく一眼レフで本格的な動画撮影ができるようになった。
一眼レフにはビデオカメラよりも大きな画像を読取るセンサーが備わっている関係で、画質やボケなどの点では、従来の家庭用カムコーダーを遥かに上回る実力も備えている。そもそも動画は、24〜30枚の写真を1秒で見せているものなので、元は写真なのである。よって、その一枚の実力が高い一眼レフは、映像制作にも高いポテンシャルを持っている。
自分の場合、そうとうな家電好きであるにもかかわらず、これまで一度もビデオカメラを買いたいと思ったこともないし、実際に所有したこともなかった。での、この一眼で撮った映像を見たとき、あまりの臨場感に自分でもやってみたくて、すぐに前の一眼レフを手放して、5D Mark2を入手した。
このインドのカルカッタの映像、こういう迫ってくる電車の臨場感は、家庭用のビデオカメラでは撮れなかった。映画用の何百万もするカメラが必要だった。
また、日本の人気アイドルAKB48の「10年桜」のPVは同じ一眼レフで撮影されて話題になった。
世界を旅して撮影されたWORLD CRUISEも同じカメラ。この作品は、歩きながら宙を浮くように撮影された映像として2011年に話題になった。
他にも「Canon 5D Mark IIで撮られたすごい動画まとめ」にいろいろ上がっているのでご参考までに。
一眼レフカメラとビデオカメラは、どちらも動画が撮れるがそ長所と短所がそれぞれある。
一眼レフの長所は、
- 高画質(まるで一眼で撮った写真が動くみたい)
- レンズ交換可能:背景のボケ具合、パースペクティブや画角など自由自在)
- 一眼レフ本職の写真も美しく撮れるため、どちらも一台で写真も動画も可能。
- 動画撮影用のオプション機材が充実していきている:ピント合わせ用のスコープ。高性能マイクなど。
一方でビデオカメラに比べての短所は、
- Canonの場合は、ピントを合わせたい被写体を自動でおいかけてくれない(オートフォーカスではない)。マニュアルピント合わせになれる必要あり。ソニーのαはオートフォーカス優れているはず。
- 動いて撮ることを前提に作られてないため、手ぶれ補正機能に期待できない。
- 長時間の撮りっぱなしはできない。29分59秒で一旦停止する。でも、普通はシーンごとに停止して撮影するから基本的にそれで困ることはほとんどないと思う。
一眼レフのハイビジョン動画は、三脚に固定して撮ると、見事な動画が撮れる。一方で、動きながらだともうぶれぶれで見るのが辛い映像になってしまう。
WORLD CRUISEの映像は、一眼レフを移動しながら安定した映像を撮影するためのスタディカム・マーリンという機材を導入した画期的な作品だった。
ステディカムは、これまではプロのカメラマンや映画などの作品づくりで使わてきた機材で、大きなものになると身体全体に装着して使うものもあるが、マーリンは一般的な三脚より小さく、ヤジロベイのような形状で旅先にも気軽に持っていける製品である。
夏学期の波止場のプロジェクトでは、このステディカムを使って歩きながら撮影することを試みた。しかし、この機材を使いこなすのが予想外に難しくて相当苦戦した。
実際にセッティングが落ち着くのに1週間、なんとか見られるレベルに持っていくのにほぼ毎日練習して2週間かかった。確かに、この機材が楽器と同じで練習しないと上達しないと言われたわけである。
上手く使いこなせるようになると、まるで宙に浮きながら撮影しているかのような映像の制作が可能になるすばらしい機材になる。
あと、この機材を約8万円くらいで購入していて、意地でも使いこなさないと投資も無駄になると思って必死で練習した。(もっと安価なステディカムはいくつかある)
ステディカム・マーリンには、説明書もついてるし、DVDによるインストラクションもある。でも、僕はいくら読んでやっても上手くいかなかた。どうも、根本的な理解が得られなかったからだ。他にも、日英で公開されているビデオやWEBを探したけれど、一番役に立ったのは下記の解説。
ビデオサロン「STEADICAM MERLIN取材風景」
このビデオを見るまで、カメラやレンズごとにある程度決まったセッティング数値ばかりを追い求めていたのだけれど、これを見たらなぜその設定にする必要があるのかの理論的に理解できた。さすが、マーリンの日本代理店の方の解説。
これを理解すれば、どんなレンズ、マイク、付属物をつけていても自分で微調整することができる。
さて、では設定ができたらパーフェクトかというと、そうでもない。自分の場合は、ここから更に2週間かかった。ポイントは、左手の添え方にあった。歩き方も腰が上下しない歩き方、いわゆるすり足がいいとのこと。それは比較的早期に気がついてやっていたが、最後まで悩んだのがこの左手の添え方。まさに、野球でいえばバットコントロールのような微妙なニュアンスが、映像にダイレクトに現われてしまうのが、このステディカムの醍醐味というか、難しいところだと実感した。
そのようにしてなんとかたどり着いたのが、DOCKLAND MEMORY IN ROTHERHITHEの中で歩きながら撮影しているシーンの動画である。まだまだ修行が必要。
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