完全な闇の中で

今日は、暗室での白黒写真の現像と印刷についてです。

これは、このコースのおいしいところのひとつです。
やっぱり自分で撮影したフィルムを自分で現像するというのは、デジタルとは違う味があるのです。
実際、この現像を始める前は、これは趣味人の道楽じゃないかと思ったものでした。なぜなら、もうデジタルで手っ取り早くできるから。暗室現像は全てにお金と手間がかかります。フィルム、薬品、暗室、レンズや紙などなどなど。
でも、特に人を撮ったものを見ると、テクスチャーというか、違うんです。はじめてカラーのフィルムを現像して写った友人を見ていたとき、思わずかなりの時間見続けてしまいました。そこに存在していたことをより鮮明に思い出せる雰囲気が残っているように思えたのです。
(ところで、デジタルでもLightroomでフィルムの特徴をプリセットで使えるらしいけど、それはどのくらい再現力をもっているのだろう)

さて、そんなことで現像はしっかり学んでマスターしておきたい必須過程です。

暗室実習の取り組みは、まずは2本の白黒フィルムを用意して、一本は都会をテーマに、もう一本は田舎をテーマにして撮影することからはじまりました。
(フィルムは、ILFORT HP5 PLUS400を使っています)

学校の暗室は、個人用のブースが10カ所くらいあって、そこで作業します。
一人だと危険なので、予約して使うときも最低二人からとなっています。

中へは、秘密基地みたいな通路を通ります。
円筒があって、そこに入ってぐるりとカプセルを回転させると違う出口が開くわけです。

赤いランプくらいついているのかと思ったのですが、

スタンバイが済むとすべての明かりが消えてまったくの暗闇になりました。
先生は、最初は焦るが、落ち着いて失敗してもいいからまずはやろう。困ったら呼びなさい、と。

暗室作業。
フィルムカートリッジの下を栓抜きで引きぬいて中のフィルムを取り出します。ここは手を切りやすいので要注意です。なにせ、全くの闇ですので。
フィルムの前後をハサミで切って、それを白いロールに巻きつけていく。現像タンクにロールをセットして光が入らないように蓋を閉める。真っ暗闇でそれをごそごそとやっていきます。ほんとなんにも見えない。触覚だけが頼りです。
ぼくは、肝心の白いロールをどこかに転がしてしまって、手探りで必死に探しましたが、5分くらいしても見つからず、SOSしました。

「せんせーい、ロールが見当たりません。つまり落としてなくしたみたいです」
「どうしたんだい」、とクイントン先生がやってきて、「オレが新しいのを持ってきてやるから待っていろ」と声がしました。
どこにいるんだい、声を出してみて、みたいな感じで居場所を確認しあいました。

後で明るくしてみたら、台の下に落ちてました。なんてことない距離なのに、暗いとなんにもわからなかった。

次は、明るい所で薬剤を調合してタンクに入れる。ISO400のフィルムなので、5分間薬剤につけます。
1分ごとに5秒シェイク。バーテンダーみたいな動作をゆっくりやります。

5分たったら液を捨てて、Stop液を注入。5分待つ。

液捨ててFix液を注入。5分待つ。洗浄液を入れて一回流す。水を流し込み20分待つ。

フィルムを取り出して乾燥機に入れて30分。
手間がかかりますが、すべてが済んでも、まだ現像の半分が終わっただけでこれから、まだ用紙に焼き付ける作業があります。

この作業がすっかりリラックスしてできるようになったら、暗室の闇を楽しむことができるんでしょう。

さて、いろいろ設備の故障もあったりアレンジが悪かったりで、まだ紙への焼付けはお預けですが、Nikonスキャナーでの読取を今日してきました。

一枚目の警察官は、白と黒の制服と金髪がとても美しいと思いました。これはイメージにまあまあ近いかな。そうそう、ロンドンの警官ほどかっこいいのをみたことないですね。

うーん、かなり納得いかないできです。
うちの学校、Elephant&Castleという奇妙な名前の土地にあります。像とお城です。
その象徴がマーケットの前にあるのですが、どうやら後ろのビルとかぶってしまいました。
ほんとはこの像ド派手な色なんで、後ろのビルから浮き上がるかなあと思ったんです。白黒はそのコントラストをどう出すか、考えますね。

なんか傷みたいなのが右上についてますね。これはPhotoshopを使えば隠せるけど、今後の課題としてそのままにしてみました。たぶん、現像前か後のローリングをする段階でぐにゃりと折り曲げたときについてしまったんでしょう。左上には、変な粉みたいなのもついてる。

撮影時と現像時の両方に課題がありますが、まあはじめてだから課題山積は当たり前です。
今度はもう少しISO感度の高いフィルムかデルタという濃淡がよりはっきりでるフィルムを選んでみようかと思います。

この記事へのコメント

1. Posted by Rico   2011年10月20日 20:42
大学時代に一瞬だけ写真部にいたのですが、なじめずにすぐやめてしまいました。でも暗室だけは本当に好きだったなー。
あの独特の匂いが妙に落ち着くのです。
フィルムから自分で焼き付けるというのは、今の時代、本当に贅沢な時間の過ごし方です。
また素敵な写真楽しみにしています;)
2. Posted by Shin   2011年10月21日 05:50
> Ricoさんコメントありがとう!

フィルムだと一枚一枚の撮影に相当気を使ってしまって、なかなかフィルム36枚を撮りあわらないです・笑

でも、実態あるものを触ったり、振ったりしながら現像していくのってのはいいものですね。儀式のようです。

大学の先生にも、暗室派とデジタル派がいて、思想が結構違って言い分をきくのが興味深いです。

さてその後、お仕事には慣れましたか?写真展もなさるようで。またそのうちメールしますね。

3. Posted by Masabu   2011年10月21日 06:46
アンセル・アダムズが書いている写真の方法論の3部作があって、あれのNegativeとPrintがアナログ写真には役に立つと思うよ。古い本なので中古で安く買えるはず。あの本に現像液や条件によるコントラストと諧調の違いについていろいろ書いてあるよ。ただ、Photoshopでtone curveをいじることで、諧調はどうとでもなるから、フィルムやプリントの現像液を被写体にあわせて変えるというようなことはもうしないけれども。

現代だと、写真のさまざまなパラメータが独立したものになっていて、それらを独立に操作できるのだけれども、アンセルの時代だとかアナログだと、each productにそれぞれ特徴があって、紙、現像液や引き伸ばしレンズとかの固有地の組み合わせを経験則でもって最適なものを作ってゆくというプロセスは まさに職人技です。

 

4. Posted by Shin   2011年10月21日 07:24
>MasabuThanks!
Amazonで検索したら出てきた。せっかく環境が充実してるので、読んでいろいろ試行錯誤してみる。

材料費を学校に払ってるから、現像液や暗室は印刷紙さえ買って持っていけばフリーで使える。やらなきゃ損だね。

マミヤの中判もあって、それは予約して使うんだけど、あれ使ってるとデジタルパックがほしくなるもんだよね。すごい高いと思うけど。

ところでHPにある同僚の写真と犬のしょんぼりしてるのがとても気に入りました。
モノクロだと余計にまなざしの行方みたいなものが気になります。

5. Posted by Masabu   2011年10月21日 13:59
Jessicaの写真は今週mpixというオンラインのプリント屋さんで8×10にして印刷してもらいました、また、モデルになってもらうよてい。あの犬sは僕も気に入っています。犬の写真は一期一会だけど。デジタルパックはまだ高いよね、リーフの一番安いやつでまだ70万円ぐらいだしPentax 645もそれぐらいの値段のはず。

ただ、あと5年もすれば手の届く値段になるでしょう。デジタルバッグを古い中版につけてもレンズ性能が追いつかないかもしれないのですがペンタやハッセルの現行品は、どちらもデザインがすごくダサい。あのグリップが無ければいいのに。

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