アート・スクールにおける知識とその応用

公開日: : 最終更新日:2014/07/31 ロンドン芸大 / Uni Arts London, 写真学び / Photography study

7月11日からはじまった夏期集中セミナーは、あっという間に4週ほど経過しました。

どんなことをしているかというと、基本的にはこれから大学院で学ぶにあたって、学術研究の方法論を学ぶわけですが、そこは芸大なだけあって少しユニークです。

学術に加えて、分析と創作という内容が多分に含まれています。

日本の芸大や美大がどのような教育をするのかはほとんど知りませんが、ロンドン芸術大学ではコンセプトに重きが置かれている片鱗がこのコースからもわかります。

なぜかというと、作品を創作した動機や意図について、分析的な視点を通して説明することが求められているからです。

そのための基礎理論としてSemiology(記号学)やMythology(神話学)の分析方法を学びます。ただ知識として学ぶだけではなく、実際に語ってみよう、作ってみよう、というのが本コースのいいところ。

*記号学は、言葉と事象と意味を系統立てて分析する学問。

わりと抽象度の高い内容なので、最初は学生たちも「こんな複雑で抽象度の高い概念を学ぶ理由はなぜか」とチューターに質問していました。

その後、実際にこの手法を使っていくつかの論争を生んだ写真やイラストなどをチームで分析して議論していくことで、自分の分析能力を高めていくことが実感できて、自分もなるほどなあと納得したものです。

たとえばこんな写真を使って分析と議論をします。

この写真はなにを意図して撮られたのか。それぞれの構成要素を元に説明していきます。この写真は60年代のアメリカ社会での家族のあり方を象徴するものとして撮影されたそうです。

A Family on their Lawn one Sunday in Westchester, NY by Diane Arbus

夫、妻、子供、芝、森の存在などについてその意味を読み取っていきます。定性的な分析を通して、感性にも計画と根拠をというコースの哲学が感じられて興味深いです。

実践は、解釈にとどまらず、この次はさらなるプロジェクトが待っていました。一クラス20人ですが、いままで一緒にチームワークしたことがない人と4人組みになって次の条件が与えられます。

・テーマ:チームで創作をしてそのコンセプトとプロセスを説明せよ。創作はなんでもよい。

・予算:一人1ポンド持って、決められた1ポンド均一ショップで10分間だけ買い物する時間が与えられる。

・時間:検討、創作時間は2時間。

・発表:5分間 全員が話すこと

僕は中国人、ベネズエラ人と同じチームでした。インダストリアルデザイン、グラフィックデザイン、写真専攻という組み合わせ。

はじめはどうなることかと思ったけど、ちょうどオリンピックということもあり聖火トーチをよりスタイリッシュなデザインに作り変える、創作の情熱を表現する、という方向性で創作がはじまりました。

黄色のウレタンポール、カラーペン、炎を表現する金のビニルシート、カッターナイフを購入。図面を書いて、作業を分担して割りとスムーズに進みました。

ものができると、今度は意図を箇所を示しながら説明。こういう学習だと思考法、プレゼン、英語もそれぞれ学べて効果的です。

他のチームは演技で表現したところもあって、なかなか面白かった。質疑応答についても評価が入っており、よく練られたコースです。

ひとつ驚いたのは、最後にみんなでどこのチームが一番よくできてたかというところで、ほぼ全てのチームが自分のチームが一番だったと言い切ったところ。アート学生、このくらいの図々しさがなければ、です。

このコース、自分としては参加してよかったなとここまでは思ってます。

Bauhaus(1919年創立ドイツの著名アート・スクール)の個展を見に行き、教育哲学について整理し、その哲学を応用して課題のプレゼンをせよ、という次の課題もなかなかおもしろそうです。この話は次回。

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