ロンドン芸術大学修士課程スタート ”なぜ今、ドキュメンタリー写真?”

公開日: : 最終更新日:2014/07/31 ロンドン芸大 / Uni Arts London, 写真学び / Photography study

1月7日からロンドン芸術大学でのフォトジャーナリズム&ドキュメンタリー写真コースがはじまりました。

思い起こせば、3年前くらいからプランをたてて、昨年一年基礎コースで学び、夏に大学院の準備コースで記号論などの分析方法をかじってようやくたどりついたわけです。

なぜ今、ドキュメンタリー写真?

そもそも、なぜこの分野に興味を持ったかというと、元々、人の行動や意思決定に影響を与える要素に関心があって、学生のころは社会調査法や統計学を学び、働き始めてからはメーカーのマーケティング部門でリサーチやデータ分析、定性的なインタビュー、データベースマーケティングなどを実践してきました。

統計学やリサーチなど学んだことは活かせるし、ライフスタイルを観察し理解したり、製品のフィードバックをもらったり楽しいことが多い会社員生活。その後、上海へ転勤する機会をもらい、巨大な中国市場を対象に引き続き、人々の好みや生活の様子を探り、どうやったら製品をより買ってもらえるか、どんな製品が必要かをブランドマネジャーたちと考える機会に恵まれました。

はじめての長期の外国暮らしは、驚きの連続でした。言葉を学ぶ機会も同時にもらい、幼児レベルの会話からはじまり、わからないなりにも現地社会に入っていこうとしていたのが2009年のことです。当時、上海の町は万博に備えて激しい建築ラッシュでした。地下鉄が10路線近く開通し、大きな駅の周辺には、ルイ・ヴィトン、エルメス、グッチ、BMW、メルセデスとグローバルブランドが軒を連ね、スーパーも欧州のTescoやカルフールがいくつもできて、来る前に抱いていた印象とは大きく違っていたことを憶えています。

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その一方で、高層ビルから少し離れれば、戦後に占領されていた時代の租界地の名残があり、フランスやイギリス、日本風の住宅群が見られます。中国固有の古い低層住宅地には、人と自転車がようやくすれ違えるくらいの路地が広がっており、その隙間から遠方に見える高層ビルをみると、2つの異なる社会がここには存在しているんだと思ったものです。

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仕事では、全国から集まるデータの解析をしたり、実際に一般のかたのお宅に出向いてインタビューをさせてもらったり、全国の大きな都市に出張して町や店舗を回ってマーケティングの計画がしっかり実行されているのかを見て回ったりもしました。マーケティングチームとともに仮説を考えたり、検証したり、よりよくセールスが伸びるようにしていくために活動しました。

そんな生活を2年半ほど続けて、日本のときとはかなり違う人々の趣向や行動習慣に触れ続けるうちに、データやレポートでは伝わえきれない部分への問題意識を持ち始めました。たとえば、インタビューやサーベイをして分厚いレポートを作ったとしても、なんかインパクトにかけるし微妙だなあと思うことが増えたのです。

極めて限られた時間の中で、事実を積み上げてものごとを検証していくには、全体の中で自分たちが見たものが、どんな位置づけの出来事なのかを整理して情報を集めて分析、理解していかなければ科学的だとはいえません。だから、それまでやってきたことを否定するつもりなんて微塵もないのだけれど、気づいたこと、わかったことをどうやったらもっと心にずどんと感じてもらえるように届けられるか、そこをもう少し工夫しないとなあと思っていました。自分が思い描いていたその問題意識は、プレゼンテーションの仕方とか、図表の描き方とかとは少し違う次元の課題意識でした。

特に、中国ではビジュアルやにおい、音などの要素が強烈な印象で、それを上手く拾って伝えたら面白いだろうなと考えていました。あと、あまりにも早く陳腐化してしまう生活者やマーケットのレポートというものにもっと付加価値をつけられないかとも思いました。

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そのときに、いままで使って来なかったビジュアル活用の仕方に関心がありまた可能性を感じていたのです。ビジュアルの中でもどんどん活用の幅が広がっている写真や映像が面白いな、と。リサーチを下敷きにした写真を少し自分なりに工夫して、リサーチ&アートの分野で面白いことができないかというのが第一歩です。

リサーチ中心かクラフト中心か

その次に決める必要があったのは、リサーチやマーケティングを目的にイノベーション・リサーチ関係へ進むか、思いっきりモノづくりにシフトするかという大きな判断でした。ロンドンにもイノベーションやデザインリサーチ関連のコースがあり、当初は自分の経験からもそちらのほうが向いていると学校側からアドバイスをもらっていました。そちらに進めば、あくまでリサーチャーやファシリテーターとして、写真や映像なども洞察を得るために有効活用するという道になります。

ただ、自分の中で一応伝統的な社会科学のリサーチスキルと運用経験は合計すれば10年以上は積んでいるので、そういうプロセスで得た洞察をどうやって作品化(表現)できるのかに関心がありましたし、純粋にやってみたいと思っていました。

調べて状況がわかったら、それを昇華させて、ものにしてみたいというのは自然な流れじゃないでしょうか。それなら、部署異動で商品企画に行けばよかったのにとも言われそうですが、様々な制約を考えるとそれもちょっと違うなあと。

なので、一年間は基礎コースで様子を見ながら、2年目に完全にリサーチをベースに写真を使ってドキュメンタリー作品を作るコースに進みました。それがこのマスター1年コースへ来た理由です。

では、次回はこのコース自体はどのような目標設定と授業を開講しているのかを参照してみたいと思います。

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