インドの婚活・新聞広告編/How to find the right one on newspaper
公開日:
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最終更新日:2014/08/04
習慣 / custom 新聞
インドでThe Times of Indiaという新聞を購読しています。英字新聞では最大規模で250〜300万部ほど刷られています。日本だと日経や毎日新聞と似たような規模でしょうか。
政治経済、社会、文化と日本の新聞と変わらないページ構成ですが、日曜版はちょっと違います。毎週日曜日に一面を割いて掲載されるのが、花嫁花婿募集の記事”Matrimonial”です。(この広告をアーメダバードで出すには5行で730ルピー(1250円)です。デリーでは3400ルピーですので、広告のリーチ数で差がついています)
本人や親たちが娘・息子たちの相手を探すために、宣伝を出しています。この記事からは、高望みすぎてそんな相手いるのだろうかというようなむちゃな条件があったり、希望条件を通して社会のシステムや理想像が透けて見えて興味深いのです。近年、大学生の間では恋愛結婚の比率が少しずつ増えているといいますが、以前大多数はお見合い結婚というのがインドのスタンダードです。
さてこの広告で「求む花嫁・花婿」に続く相手に望む条件の一番手は”BY CASTE”は「カースト」別というリクエストです。続いて「言語」「宗教」「民族」などがあります。
実際の掲載内容を読んでみるとこんな感じです。離婚経験者も1割程度いるという印象です。
花嫁を求める男性による広告内容
例1.バラモン(カースト)を求む
32歳177cm インド工科大学ムンバイ校・工学士 マイクロソフト勤務 (カースト不問)
例2.国際人を求む
落ち着いたハンサムなカトリック教徒の男性。39歳166cm、円満離婚歴あり、エンジニア博士号ムンバイ大学グレードA卒業、高学歴で教養があり美人で、働いている女性募集(未婚、円満離婚、未亡人可)、27〜36歳まで。カースト不問。
花婿を求める女性による広告内容
例1.ヒンディー語求む
インテリアデザイナー、25歳168cm、色白美人、文化的な女性。アーメダバド市内有名デザインファーム勤務。アーメダバードかムンバイで働いている経験あるプロフェッショナルで、教養豊かな家庭出身の男性を希望。
例2.カースト不問
かわいいヒンドゥ教徒でベジタリアンの女性。身長167cm、1985年9月7日Krishna Janam Ashtamiデーの3:35分生まれ。小麦色の肌。ニューヨークコロンビア大学の医師一年目。初年度年収60,000ルピー。ハンサムで酒を飲まないNRI, H1B, グリーンカード所持者、医学博士あるいはアメリカ国内で学位を得たエンジニアで、アメリカ(ニューヨーク)でキャリア形成したい男性を希望。軍関係のご家族であればなおよし。カースト不問(ただし下層カーストは不可)
3週間ほど眺めていると、現実的な方とかなり条件が厳しくて難しいそうな人がみえます。この最後のベジタリアンの女性は、相当ハードル高くしてますね。。。一体この条件にあうアメリカ在住で医学博士の男性かつ家族が軍関係者は世界で何人いるのでしょうか・・・。
一週あたり160〜170件ほど一週間で掲載されるのですが、統計的にまとめてみるとより体系的にどんな層が応募してきているのかわかります。
構成調査ではインドの男女比は10:9で男性の方が多いのですが、新聞紙面に広告を出している比率では女性もしくは娘を持つ親の方が多いことがわかります。年齢と合わせてみるともう少し気づくことがあります。
年齢は男性は32歳、女性は31歳。女性の方が、20代の構成比が高いのが特徴です。MedIndiaというインド国内のヘルスケア関連の情報プロバイダーによれば平均初婚年齢は男性26歳、女性22歳になっていますので、それ以上の方々が広告を出していることになります。男性と女性の広告主の平均年令はあまりかわりませんが、平均初婚年齢からの乖離で考えると、男性が6歳、女性が9歳と女性の方がより切実であることがわかります。
では、みなさんがどんな条件で相手を探しているかの一覧がこちら。やはりカーストが一番大事であることが割合からもみえます。そして、少なくとも22の公用語が話されているインドでは、言葉の一致も大切。これがなければ、夫婦の会話もままなりませんし。。。
ただ、この希望条件は実際に記事を読んでいると少々不思議な印象も持ちます。カースト希望で記事を出しておきながら、中身に”Caste no bar”(カースト不問)とあり矛盾があるからです。これは次の記事を読むと納得します。‘Caste no bar’, in words if not in action(The Hinduより)。この記事によれば、本音と建前は違うということです。多くの人がカースト不問と言葉では言っているけれど、実際の結婚データを見るとほとんどが同じカースト同士で結婚しており、異なるカースト間での結婚は近年10%も上昇していない、と言われています。この新聞広告でも同じことが言えるのでしょう。
実際は、女性は同じカーストかそれ以上を望み、男性は同等を望むのが一般的と言われています。
相手に望む条件をもう少し詳しく見てみましょう。
カーストで条件としてあがっているのは、バラモンとクシャトリアといった上位カーストがやはりトップ2を占めてます。カーストは4つの大分類と数千に渡るサブカーストによって構成されているといいます。この3週間分のデータでも、21のカーストが出てきています。結局、家の結びつきを重視するインドでは、この広告を新聞に出す層ではカーストを大切だと考える人が多いということです。
言葉で1位のPunjabiは北インドで話されている言葉です。圧倒的に多く話されているヒンディー語よりも、結婚相手を探すのがより困難な言語の方がこうした大メディアに出すには向いているでしょうね。
将来できれば自分もその国で暮らしたいと思っている国際人を結婚相手に求めている人は、47人と3週間のデータでは1割程度いることがわかります。こうした相手も、なかなか職場や近所にはいないでしょうから、マスメディアを使って探すというのは納得できます。
”Caste No Bar”(カースト不問)は、記事を読んでいくと、実際にはそれでも下位カーストはごめんなさい、とか書いてあるので鵜呑みにできない表記です。あと、先程も書いた本音と建前はここからだけではわからないところです。
宗教ではイスラム教信者がスンニ派もいれると33人と大多数。人口でいえば大多数はヒンドゥ教のインドですが、紙面婚活はやはりまわりで探しづらい人たちが多くなるのでしょう。
職業希望については、これを一番の見出しにして探している人は少数派ですが、実際募集の記載の中にはかなり指定があります。できれば、エンジニア、できれば医者などという記載が目立ちます。
http://payload287.cargocollective.com/1/15/497772/8047147/Screen-Shot-2014-06-08-at-00.57.23_oデータや記載内容からわかるのは、インドの婚活で特に大事なのは、カースト、同じ母語、高学歴、痩せていること、色白、ホワイトカラーであることがあげられます。理想と現実は違う?でも、そういう理想像を見ておくことは、その社会が理想とする家庭像を表していて多くの示唆が得られます。
今回のデータは、全て新聞婚活紙面から取ったものなので、インド全体を代表する結果では全くありません。ただ、インドで最も読まれている英字新聞に掲載されているこの広告は、新聞購読者というやや保守な層の意見を色濃く反映していることでしょう。比較として、近年多くの若者が使うインターネットのマッチングサイト(http://www.bharatmatrimony.com/)のデータを比較するとまたちがった側面が見えてくると思います。
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