妻にジーンズ着用を禁止した夫との離婚裁判@インド

公開日: : 習慣 / custom

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ムンバイ家庭裁判所は、妻にジーンズの着用を禁止した夫と離婚する権利があるとの判決を2010年に結婚した夫婦に下しました。

妻は、2010年12月に結婚してから妻に一着も服を買わず、自分で民族衣装の上着であるクルタとジーンズを買いました。しかし、夫はその着用を許さず、サリーだけを着ることを命じたとのことです。

6月24日に家庭裁判所の判事は、1954年に制定された特殊婚姻行動27(1)(d)条にのっとり、妻に離婚の権利があることを判決として下しています。

判決によれば、「妻がジーンズとクルタを着用できない苦痛を考えれば、特殊婚姻行動が定める事例に当てはめることができ、離婚は成立する」述べています。

原告によれば、この妻はジーンズを禁止されただけではなく、10万ルピー(約17万円)を持参するか報復を受けるかを夫と親戚から言われており、更に結婚後も続けている仕事を辞めるように要求されていたと訴えています。

2011年3月には、10万ルピーが支払えないことで結婚後に住み始めた家も追い出され、今は実家に暮らし失業中です。

夫はAmbarnath(大都市ムンバイの郊外:人口30万人)で暮らしていた家に妻が帰宅できる配慮も全くしておらず、嫌がらせのSMSを妻やその家族に送り、家族の評判を貶めていると訴えています。

The Times of India 2014年6月29日付より

はじめこの記事の見出しを読んだときには、ファッショントレンドに対する夫婦の価値の違いから起きたトラブルかと思いましたが、本質は「持参金」や「妻の仕事」といったインドの女性に対する伝統的な抑圧が原因のできごとだということがわかりました。

インドの結婚といえば、何日も続き何百人の人が参加し陽気な音楽とともに踊り続ける華やかなイメージの反面、悪しき習慣が残っている地域も多いのが現実です。

その習慣のひとつが、新聞記事にもなっている持参金の問題です。

結婚持参金(ダウリー)とは

インドでは、ダウリーという結婚時に新婦が新郎一家に多額の金額を持参する風習があります。ダウリー(dowry)は1961年には法律で禁止されましたが、地域によっては実施されており、多くの問題を引き起こしています。

この裁判の事例も、結局のところはダウリーのお金が持参できないことが根のようです。持参金を巡って起きる殺人事件が後を絶たず、おどろくべきことにインドの公式記録では2012年一年だけでも8,233人の花嫁が命を落としています。近年の経済発展で、ダウリーの相場はどんどん高くなっており、その額は、数十万から数百万円まで多岐に渡ります。これはインドの支出相場から考えると、とても高いといえます。しかし、もし支払えない場合、嫁ぎ先で冷遇され最悪の場合、傷害や殺人事件に発展してしまう可能性もあるのです。

女性の社会進出を妨げる家事専念

農村部や小さな都市のレストランや小売店に行ってみると、男性ばかりが働いていることがわかります。私は、インドに来て依頼、レストランで女性のウエイトレスや料理人にサーブされた記憶がありません。唯一記憶にあるのは、マクドナルドやケンタッキーのようなファストフード店のみです。女性は結婚したら家事に専念すべきという意見は根強く残る考えです。

大手家電メーカーのインド・デリー支社でインド女性を部下に持つ知人も言っていましたが、結婚した後、夫の両親から外で働くことを辞めるようにプレッシャーを受けていて悩む社員が多いとのことです。両親や夫は、妻に帰宅後に食事を作らせるために、何も食べずに待っていることが多く仕事と家庭の間で思い悩んでいることを相談されていました。

ジーンズとサリー

普段、私は主に大学の二つのキャンパスを中心に生活しています。そうすると、大学生や院生たちのファッションが郊外と比べてとても刺激的で先進的なものが多くて、インドのスタンダードを誤解してしまうときがあります。

男性はどこもあまり変わらずジーンズかチノパンとシャツです。一方、女性は学外の人と比べて洋服の人が多く、タンクトップやTシャツで体のラインがはっきりわかるファッションの人も少なくありません。NIDはデザイン学校のリーダーたる大学ですし、ファッションやテキスタイルデザインの大学院コースもあり、ファッションも先端の学生が集まっているのは当然です。

しかし、一歩、壁の外に出れば、そこには彼ら彼女たちをまるで外国人のように見る一般の人達が暮らしています。古くからのインドの風習は、町中であっても健在です。

いや、外ではなく大学構内でも、いくつかの気づきを得ることができます。

たとえば大学構内をぐるり一周してみるだけでも、仕事の役割に応じてファッションが全く異なることに気がつきます。学生たちは、かなり自由な格好をしています。教員はきれいめの格好の人と、ジーンズとTシャツのようなラフな方と半々くらいのようです。

一方で、警備員はそれとわかる制服ですし、掃除やメンテナンスを担当する人々は男性は制服のポロシャツにジーンズ、女性はサリーの方がほとんどです。清掃担当の女性で洋服を着ている人を見たことがありません。それは、大学にかぎらず、他の施設やお店でも同様です。インドでは、職業と階層が密接に結びついています。

大学生は外国人のような存在

社会階層や教育水準と服装を含む習慣は、密接に関係していると考えられます。

デリーで訪れた超高級モールでは、女性も洋服着用率が非常に高かったです。大学施設も同様です。あと、私の住まいの近所にあるタタ・コンサルタンシーというITアウトソーシングの会社の社員も、洋服の社員が多くIT企業の自由な社風を感じ取ることができます。

インドでは一般的に親が結婚相手を決めることが多いですが(本人同士はそれまであったことすらない場合も多々)、大学生たちはキャンパスで恋愛をはじめ、そのまま結婚するケースも増えています。キャンパス内で学生同士のカップルを何組も見ることができます。

このようにインドの富裕層や教育水準の高い層では、伝統的な価値観は破られつつありますが、それはごく一部です。大多数は、伝統的な風習と価値観の中で暮らしているといえます。

特に女性に対する抑圧や犯罪は、毎日新聞紙面に載るほど多く、大学生だけ見ていたらどこの国の話?と言う感じですが、大きな社会問題としてようやく考え始められたばかりです。この新聞記事は、多発する問題の中でも裁判所が新しい判例を示したことでニュースになったと考えていいでしょう。

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