(前編)頭の中のイメージをコラージュで表現するワークショップ「百聞は一見に如かず」

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異文化間のコミュニケーションにおいて、お互いが思い描いている内容を言葉だけで伝えるのは難しいものです。例えば、インド人に日本のコンビニの品揃えをいくら説明したところで、おそらく想像が難しいですし、逆にインドのITの最先端の職場の様子がどうなっているかも同様だと思います。異文化だけではなく、異なる世代や業種においてもときに同様のことがいえます。

そこで役に立つのが、写真やイラストなどのビジュアルの活用です。

昨今、リサーチにおいてもデザイン分野の方法が取り入れられる機会が増えています。考えを言葉ではなく、簡単なイラストに描き出したり、写真に撮ったりすることで、チームメンバーの意識により豊かなイメージを共有することができ、その結果として閃きを生む機会を増やすことができます。

しかし、描くのが苦手、または敷居が高いと感じる方が多いのも事実です。そんなときは、新聞や雑誌の写真やイラストを切り貼りして、自分の考えている内容に近いコラージュを作り上げる方法も短時間でカジュアルにできる方法として有効です。

今回、グジャラート州ガンディナガルにあるパンディット・ディーンダヤル石油大学(PDPU)で日本語教育を展開されている市進インディアさんの依頼で、ビジュアルコミュニケーションに関するワークショップを行いました。 教養学部の学生たちにコラージュの制作を通して、自分の住んでいる町について表現してもらうことにしました。

 

ワークショップの目的

PDPUは、我々のいるNIDから車で15分程度のところにあるご近所の大学です。教養学部に加え、石油やソーラーエナジーといったユニークな学部を持つ大学です。

今回は、二つの意図を持ってワークショップを企画しました。

1. ビジュアルで伝える

普段は教養学部で日本語をとっている学生が対象です。インドについて具体的なイメージを持たない人とコミュニケーションする際に、有効なビジュアル活用のスキルを体験してもらいます。

2. ビジュアルから気づく

様々な視点や発想から作られるであろうコラージュを見ることで、町に対して新しい気づきを得てもらうことです。

題材:ガンディから名前をつけ、モディ氏が育てた州都ガンディナガルはどんな町?

私の実体験なのですが、インドのガンディナガルに来るまで、この町のことがさっぱりわかりませんでした。 2012年に、インドに一ヶ月ほど滞在してことがあるので、そこでみたデリーやムンバイ、ヴァラナシーのイメージを元に、言葉で説明を受けたりWikipediaを読んで調べたりしました。

2014年に首相に就任したモディ氏が長年州知事を務めた経済発展が目覚ましい州の行政の中心なので、きっと栄えた町であろう、と。 ですが、半年前に現地入りしたメンバーに聞くと、「静かな町」と言っていました。ベルリンや日本の首都移転で一時期話題になった甲府あたりのイメージを持っていました。

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しかし、実際に来てみてびっくり。人口約20万人で、セクター1〜30まできっちり区画整理された都市で道路はきれいに整備されているものの、何もない中道だけがただ伸びているようで、一つの区画ごとに移動するのは容易ではありません。

また、牛や羊たちの群れが行き来するのどかさ。「静か」であるのは確かですが、徒歩で町を移動することはまず不可能な「陸の孤島」という印象を持ちました。隣の大都市アーメダバードにいる日本人駐在員の方と話していても、おおよそよく似た印象です。

私はそんな印象で町を見ていますが、はたして学生たちはどう見ているのでしょうか。そこは気になるところです。

誰に伝えたいのか?

当日は、午後2時からの授業時間で、約60名が出席しました。女性が7割、男性が3割程度。ワークショップをやるには多すぎると思える人数ですが、10組に別れてもらうことで、割りとスムーズに進めてもらうことができました。

通常であれば、この日は3時間続けて日本語の講義ですが、内半分をワークショップにしてもらっています。 はじめの20分ほどで、ワークショップの目的と方法を説明しました。語学学習を目的に集まっている学生たちが、何かを作って表現するということをどう感じるか当初は不安でしたが、好意的に受け取ってもらえたようです。

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コミュニケーションで一番大切なのは、誰に何を伝えるかです。今回は、一番ありえる設定として、Skypeで日本にいる友だちと話すという前提を設けました。決めてもらったのは以下の点です。架空でも実在する人でもOKにしました。

  • 名前
  • 性別
  • 年齢
  • 何をしている人か
  • 何に興味関心があるか

何を伝えたいか

自分の町の何について特に伝えたいかを決めてもらいました。シンプルにメッセージを集約してもらうために、伝える概念は各グループひとつに絞ってもらいました。学生たちは次のキーワードを選びました。

「Green」、「Diverse」、「Gift City」、「Gandhi Nagar」、「Gandhinagar」「Development」、「Serene」、「Environment」、「Education Hub」、「Eco Friendly」

コラージュの作り方として、我々が取り組んだ事例を見せました。いくらかバイアスにはなるかもしれませんが、限られた時間ないで表現してもらうには、終着点を見せておくのは有効であろうと考えました。

 

楽しんでやる

その後、30分ほどかけて雑誌、新聞からそれぞれのキーワードを代表するイラストや写真を切り抜いてもらい、画用紙に貼り付けてもらいました。 その際に、こちらからは「ビジュアル中心」以外には、特に特別なルールは説明せず楽しんでやってもらうことにしました。頭の中のイメージを自由に描き出してもらうには、楽しんでやってもらうことが大切です。

実際、学生たちは非常に熱心に議論と制作をはじめました。はじまってすぐ、画用紙を二枚つなげてもいいかとか、絵を書いていいかとか、文字についてなどいろいろと質問を受けました。ルールを受け身にせず、積極的に表現の幅を広げてくれる姿勢は大歓迎です。

制作に入っておよそ30分。全グループのコラージュが出来上がりました。

ざっと一覧してみると、キーワードに対して具体的なイメージを探したグループと、一段階抽象化してメタファをうまく使っているグループがあります。いずれもよくできています。そのコラージュを使って、「言葉を介さないプレゼンテーション」を行ってもらいました。

プレゼンの内容については、次回後編としてご紹介いたします。

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