インド国立デザイン大学院(NID)の就職活動週間

公開日: : 最終更新日:2014/12/19 店・会社 / store, company, 教育 / education

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12月9日にNIDの修了式が行われ、271人が卒業しました。

その翌週からはじまるのが、リクルーティング週間です。
インド中から企業が集まり、優秀なデザイナーとのマッチングが行われます。

企業側からの人材発掘アプローチ

やはりデザイン系トップスクールともなると、企業側から人材探しにやって来ます。一流企業からベンチャーまで様々な企業が訪問します。

主な参加企業

Honda R&D
Wipro Ltd
Titan Company
Whirlpool of India Ltd
Honeywell Technologies
Toonz Animation India
D’Decor Exports Pvt.Ltd
TI Cycles of India
Pratibha Syntex Ltd
DDB Mudra Group
Welspun Global Brands Limited
Star India and Good Shepherd International School

各社の目的は、優秀な学生をフルタイムで雇いたいというものと、インターンや卒業制作プロジェクトのパートナーとしてのマッチングを目的としています。それに加え、NIDの学生に対して企業ブランドを高め興味を持ってもらうことも目的のひとつであることは、どの国の就職フェアでも同じといえるかもしれません。

Hindustan Timesによれば、「オンラインの家具ストアであるアーバンラダー社は、今後25都市へのビジネス拡大に向けて、新たに10名の学生を雇用したい」と述べています。その際、特にアクセサリー&家具デザイン、ビデオグラファー、グラフィックデザイナー、テキスタイルデザイナーのポジションを求めています。

また、Honda R&D社は「トランスポーテーションデザイン、プロダクトデザイン、アクセサリーデザインコースの卒業生に3ポジションを用意している」と担当者が述べています。

NIDには多数のコースがありますが、やはりプロダクトデザイン系は就職に強く、次いでグラフィックデザインも有利です。グラフィックデザインは、写真、イラスト、動画、空間とメディアを総合で扱うこと横断的な視点が、就職の幅を広げているようにも思えます。

この習慣学生たちは、自分のポートフォリオを展示し、個別に面談を持つことでステップを進めていきます。ここでは通常の採用よりも有利なステップで、採用までこぎつける事ができるといいます。写真からも緊張感が伝わってきます。

卒業生たちの就職活動週間データ

実際に、この就職活動によってどれほどの学生が職を得ることができるのでしょうか。また、トップデザインスクールの学生たちに、企業はいくらオファーするのでしょう。気になるデータは、次のインフォグラフィックをご覧ください。

*年収のlakhは、インドの単位で10万を意味します。

数字だけを見れば、もちろん、全てがフルタイムではないでしょうし、マッチングが必ずしもうまくいくとは限りませんが、約半数の卒業生分の仕事はあることになります。

給与水準は、最も高いオファーは日本円で300万以上で、平均は170万円ほどです。18lakhの年収は、インドのホワイトカラー水準から考えればかなり高いといえます。ちなみに、外国人がインドの雇用ビザを得るには、最低2万5000ドル(295万円。1ドル119円換算)の年収が必要になります。

チャンスをどう活かすか

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このように多くの企業がリクルートに来るわけですが、実際にプロダクトをつくるコースではない、イノベーションデザイン系のコースの学生は、企業に自分を売り込むのが簡単ではないといいます。もしかしたら、そういった職種の学生は、デザインスクールよりもMBAをはじめとするビジネス系の学校にリクルーターが行くのかもしれません。優秀な経営大学はたくさんあります。

ただし、デザインリサーチやコ・クリエーションが広がっている時代ですから、チームの力を最大限引き出せるファシリテーションやリサーチ能力がある人は、活躍の場があると思います。この分野は、自ら探しに行く必要があるかもしれません。どうやって実績を見せるかは、他の分野よりポートフォリオづくりの内容に工夫が必要だと思います。

また、アートやジャーナリズムの気風が強い写真デザインコースも就職課の担当者が言うように、スキルと経験を企業側にPRするのが難しいのも事実のようです。この辺りは、カメラの性能が高まりかつ編集が簡単になるなか未学習者に比べて何がどう優れているのかの見せ方や、産業界でどのような活かし方があるかという新しい視点も必要になると考えられます。(そのことについては別にブログで書いたことがあります。「写真学科卒業後の経済的自立について」)

一方で、就職した場合もインドでは離職率の高さに頭を悩ませる経営者が多くなっています。それは上昇志向の現れでもあり、給与水準をあげるには転職するのが手っ取り早いという発想から来ているのだと考えられます。実際、NIDの学生も「とりあえず2〜3年働けるところ」というイメージで職探しする学生が多いようです。

先日、読んだ「無印良品の、人の育て方 “いいサラリーマン”は、会社を滅ぼす」という本に、「お金で雇った社員は、お金でまた引き抜かれる。だから無印では、例外を除いて中途採用は店舗以外からはしない」といった意味のことが書かれていました。ブランドへの忠誠へと繋がるモチベーションづくりは、大きな課題なのだと思います。

と、そのような課題はあるものの、企業側と出会える機会があり、そこで実際に内定が決まるというのはいい環境がNIDにはあります。先日、記事にしたMamataさんのケースではないですが、学んだことを社会で活かして活躍している卒業生の話しは理論に実務経験が重なって更に厚みがあり面白いものです。そんな人が一人ひとりとまた増えていく将来が楽しみです。

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