(後編)頭の中のイメージをコラージュで表現するワークショップ「百聞は一見に如かず」

インド・グジャラード州のPDPUで行ったコラージュを使ったワークショップの続編です。

ガンディナガルに相応しいキーワードを次のようにあげてもらいました。各チーム一つだけ使ってコラージュを作ります。

「Green」、「Diverse」、「Gift City」、「Gandhi Nagar」、「Gandhinagar」「Development」、「Serene」、「Environment」、「Education Hub」、「Eco Friendly」

いよいよ、30分の制作時間を経て、各グループのコラージュができあがりました。これからプレゼンをしてもらいます。みなさんの作品をスライドショーでご覧ください。

スライドショーには JavaScript が必要です。

言葉を介さないプレゼンテーション

まずは、できあがったコラージュを貼った画用紙だけを見せて、イメージから何が想像されるかを聴衆たちに尋ねるスタイルのプレゼン方法をとりました。そうすることで、意図した内容がちゃんと聴衆に届いているか知ることができます。 インドの学生は、こういうときしっかり反応してくれるので進行がスムーズです。

各コラージュには一言二言、キーワードを切り貼りで入れていいことにしてありますので、だいたいの意図はビジュアルとともにわかります。

DSC02137

 

ビジュアルから伝わった内容をひと通り学生に聞いた後に、コラージュに込めた思いを2分以内で語ってもらいました。

集約するとこんな感じ。

  • 1970年にアーメダバードからガンディナガルに州都移転
  • 1950年代にコーネル大卒の都市計画専門家に設計された町
  • 緑が多い町であること(54%が緑地)
  • 静かでリラックスできる
  • 現首相であるナレンドラ・モディ氏の高い志のもとに整備が進んでいること
  • 都市計画のもとに整備された町
  • ガンディから名前をとった町
  • 学園都市。著名な学校が多い
  • 大好きな我らの大学PDPUがある町
  • 若者や希望
  • ソーラーエナジーの活用などエコな町
  • グジャラート州なので禁酒・菜食中心
  • 映画の舞台になった町
  • 夏、かなり暑い

ビジュアルと言葉で伝える

今回のワークショップの目的は二つありました。

ビジュアルで伝える

日本語学習の入門者に、これから機会も増えるであろう異文化間でのコミュニケーションを想定してビジュアルを活用して伝える体験してもらいました。コラージュという方法を使いましたが、実際にコミュニケーションではスマホやPCの写真一枚だとしても伝わる情報量はずっと増すことでしょう。それは、言語レベルの高低にかかわらず、異文化では共有しているイメージが随分異なりますから、ビジュアルで伝えることの重要度は高まります。

その一方で、ポイントはビジュアルも言葉もどちらか一方に過度に依存しすぎないということが大切なのかと思いました。伝えるためには、どちらもフルに活用するのがよいでしょう。その点は、ビジュアルだけを見せて、次に語ってもらうというプロセスはうまくワークしたように思います。

 

今回、私は既に3ヶ月ガンディナガルに住んでいるとはいえ、外国人の視点から彼らのビジュアルプレゼンテーションを見ました。

正直、このワークショップまでガンディナガルは、かなりつまらない町だと思ったいました(すいません)。

夏はとびきり暑いし(45度以上)、肉が手に入りづらいし、酒も飲めない、毎度金額交渉が必要なオート・リクシャーでの移動は面倒などなど。

しかし、学生たちのビジュアルや説明、その後自分でネットで調べてみると、人々の思いが詰まった町なのです。インフラやグローバルへの意識(これは目に見える形ではまだまだですが)、区画についても、なるべくカーストなどの身分で住居が固定されにくいように考慮しているという行政目標なども出てきました。

少し見る目というか意識が変わったような気がします。より知りたい、訪ねたいという関心が高まりました。

ビジュアルで気づく

10組のチームの内容に共通して出てくるのは、カリスマとも言える存在、前知事であり現首相のモディ氏です。その後を受けた知事パテル氏もちらほら顔があります。

実際、モディ氏はグジャラートモデルと言われるような急激な経済発展を実行しました。モディ氏の父親はチャイを売って生計を立てていたため、庶民派であるとも言われています。今まさに、成長するインドの中心にいる人物であり、ガンディナガルもその影響を強く受けています。

キーワードとしてあるのは、やはり行政主導の開発と統治の上に、都市がなりたっているとの思いが強いのかなと思いました。

コラージュの成り立ちを見ると、キーワードに見合ったイメージをダイレクトに掲載する選び方が大多数を占めていますが、中には一段階抽象化しより感覚的にイラストや写真を使っているチームもありました。

個人的には、もっと気分や思いを抽象的に表現するチームもあるのかなと思いましたが、チームプレーであることを考えるとどうしてもインフラや政治家など客観的事実の部分が優先されるのでしょう。

そういう意味では、もう少し人数が少ないときに個人レベルで制作してもらうと、もっと心理的な部分が出てくるかもしれません。

企画ミーティングにも活用可能

ビジュアルを活用したプレゼンと語りは、異文化間だけではなく、同じ言語同士のコミュニケーションでも有効な方法です。特に、専門性の異なるチームメンバーと共創していくときに各メンバーの頭の中にある「思い」を視覚化して共有を促してくれます。

例として、新しい製品やサービスの開発やマーケティングの方向性を決める会議をあげてみましょう。そこでは、商品企画、マーケティング、エンジニアとそれぞれ異なる専門性の中で異なるイメージを持ちながら、語ることが多くあります。もちろん、事実を掴むためにデータやグラフを交えて話すのも重要です。しかし、そららに加えて、ビジュアルイメージ元にターゲット顧客やデザインの方向性について語ると、より深く、多様な刺激となって聞き手に共有されます。

方法としては、今回のような新聞や雑誌などの既成のイメージによるコラージュでもよいでしょうし、より具体的な要素を加えるために自分で撮った写真や描いたイラストを交えて、コラージュを短時間で作り上げても効果的です。

チーム内でより同じイメージが共有されたり、ビジュアルによる刺激が加わることで、多様な意見が誘発される一助になることでしょう。また、説明するという普段の会議の仕方から、切る・貼る・撮る・描く・見せて感じてもらう、といういつもとは違う作業と脳への刺激を通じて、見過ごしていたアイデアに気づくことも期待できます。

最後に

限られた時間の中で、学生たちは楽しみながらも真剣に取り組んでいました。出来上がったものを見ると、概ねポジティブな印象が中心になりました。カリスマ政治家、緑地、開発、インフラ、ソーラーエナジー、自分たちの学んでいる都市や学園環境がいかに将来に向けて成長力を持っているかについては、誇りすら感じられました。

もちろん、学校でプレゼンであることや、初対面の外国人に自分の国のネガティブな部分をそれほど見せたりはしないことが影響しているの可能性はあります。インドでリサーチを行う前職先輩や他の企業の方に、本音を話してもらうのにかかる時間が他の国に比べて長いように思うと聞いたことがあります。

とはいえ、今回のワークショップを経て、「ビジュアルで語る」ことで彼らの作り上げたイメージの世界観に入って行くことができました。

コラージュはほんの入口に過ぎず、何を考えているのだろう、心理的にはもっとどう思っているか本音を聞いてみたい、といった興味がほんの30分の作業で作った内容から誘発されたのです。

同じインド人の学生同士も、普段なかなか話すことがない自分の町について、各自違った視点を持っていたことも、コラージュ制作を通じて共有されていました。

より興味をもってもらいやすい、想像が広がっていきやすいというのも、ビジュアルの力なのかもしれません。

今度は違ったテーマで実施してみたいと思います。

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