アート、デザイン、サイエンス、ビジネスが交わる実験場。Godrej India Culture Lab。

公開日: : 最終更新日:2014/12/07 リサーチ方法 / research method, 店・会社 / store, company

 

インドで様々なビジネスを展開しているゴドレジには、異分野、異文化との交流を通してインドの現代や未来に向けてアイデアの交差点になっているインドカルチャーラボがあります。この組織は私のインド滞在の中で出会った中でも、もっとも興味深い取り組みをしているところです。

2011年1月にムンバイのゴドレジ本社敷地内に設立されてから、月一回のFriday Fundasというトークイベント、社内外を使った特別イベント、レポートの発行などです。私は、このラボに2012年と2014年に講演者側のサポートとして訪問しており、インドにも随分進んだ取り組みをしている組織があると思ったものです。

ゴドレジという会社は、もともとは鍵のビジネスからはじまり、住宅、化学、家電、家具、コスメなど生活や文化と密接な商品とサービスを展開しているので、こういった文化や生活フォーカスを当てる取り組みをするのは本質的な取り組みともいえます。

ファウンダーParmeshのカリスマ性

India Culture lab07

前列左2番目がParmesh Shahani氏

文化を扱っているというと、大企業に併設されている美術館や博物館や、CSR部門の仕事を想像するかもしれません。

しかし、このゴドレジのカルチャーラボが他と異なるのは、ファウンダーの Parmesh Shahaniさんの圧倒的な存在と、文化に対する捉え方のユニークさです。Parmeshさんが何者かというと、サイトによれば、作家、編集者、ベンチャーキャピタリスト、起業家、キュレーター、カルチャーカタリストと多彩で、実際に話題になる本も出版され、 Financial Times “25 Indians to Watch”やTEDフェローに選出されたりととらえどころのない才能を持つ方です。インテリジェンスにあふれるだけではなく、ユーモアに溢れそのファッションも存在感をかっこたるものにしています。
以前、ラボのみなさんと食事をご一緒させてもらったときに、「ここは年長者の僕が払うよ」と言われて歳を確認したところ、自分と同じでその風格というか存在感に驚かされたものです。

Parmeshさんは、インドのムンバイ大で商学や教育学を学んだ後、MITでコンピューターサイエンスの修士号を取得。マヒンドラ、ソニーチャンネルにおけるキャリアを経て、ペンシルバニア大学PhDコースへと進み中退後に(ご本人はそのうち復帰して取得するのこと)、ゴドレジカルチャーラボを設立しています。その理由を「博士号を得るよりも、人々を繋げていく場づくりがしたかった」と述べています。

その先見性とカリスマ性、ネットワークにより、実に様々な人がこのラボに集います。

このラボで働いているのは若者が中心に4名。いずれも短い期間の出会いではありましたら、その段取りのよさや朗らかさ、堂々としたプレゼンテーション能力には驚かされました。Parmeshさんも、たった4人だけれど、海外の名門ハーバードやMITをはじめ有名企業や学者とも対等にやり取りして、カルチャーラボでのコラボレーションを推進してくれていると語っています。

まさに、Parmeshさんのビジョンと若くて優秀なスタッフが働いているからこそ成し得る組織なのです。

イノベーターの眼差しと出会う場

このラボの源流は、”Design thinking process around innovation at the Godrej group(イノベーションを取り巻くデザイン思考の過程である)”と書かれています。私が理解するところでは、新しいものを生み出している人たちは、社会や文化を観察しながら、独自の気づきを得ていて、それを作品を通して表現している、ということです。だから、そういったクリエイターとともにその表現に触れながら対話することは、社会や文化に対する独自の眼差しを得る場にもなるのだと思います。

当初、このプロセスは直にゴドレジの本業に活かすためなのえすかと訪ねたところ、「すぐ役立つことはやっていないんだよ」と仰っていました。私は外部から、デザイン思考コンサルのようなことをしているかなと勝手に想像していたので、構想の範囲の広さに驚かされました。

建築・デザインの重鎮、安藤忠雄、原研哉も参加

India Culture lab06

月一回開かれるFriday Fundasは、ゴドレジの社内にあるホールで行われるトークセッションとディスカッションの場です。

このトークセッションには、ゴドレジ社員だけではなく外からも多数の参加者が集います。おおよそ300人ほどのキャパの会場で、場の進行を担当するのはParmeshです。

Facebookをはじめとするビジネスパーソン、建築家、画家、写真家、アニメーター、学者、エンジニア、ダンサー、音楽家とほんとに毎回多様でオリジナルな活動をしている方々が招集されています。また、日本から建築家の安藤忠雄氏無印良品のデザインアドバイザーでもある原研哉氏も参加しトークを行っています。

 

カルチャーラボが追究する”文化”とは

イノベーターの眼差しを知り気づきを得るという点でも明らかですが、カルチャーラボは、文化を単にビジュアル、パフォーマンス、美学といった狭義に捉えてはいません。
芸術やデザイン活動やビジネス・非営利活動がテーマとして扱っている生活、人口、ジェンダー、都市生活やコミュニケーション技術などに着眼しているのだと思いました。

また、Parmeshさんは、共創の出会いの場としてカルチャーラボを育てていきたいと考えています。印象的な言葉がインタビュー記事にもありました。

「朝起きると多くの人は仕事に行くのが憂鬱かもしれない。でも、僕は楽しくて仕方がない。まるで仕事というより遊びに近い感覚です。毎日夢の様な生活なんですよ」[Mid-Day, 23-Nov-2014]

世代、都市、国、ジェンダー、文化を超えた交流を推進しているこのラボの取り組みは、今後も要注目です。ちなみに、金曜日のFundaは無料で定員内であればどなたでも参加可能です。

カルチャーラボも設立に参画した新社食「アイデアの創造に一役!?ゴドレジの社食Hubble」も合わせご覧いただくとより世界観が伝わると思います。

 

 

参考リンク

Godrej India Culture Lab

Parmesh Shahani WEB

Parmesh Shahani on the lessons of life

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